ようやくトランプ大統領が無事帰途につかれることになりましたが、トランプ来日とほぼ時を同じくして来日し茂木大臣と折衝を行っていたライトハイザーUSTR代表の話はラの字も出ないほどで、お祭り騒ぎだけがクローズアップされ、さも日米関係は良好に推移したかのような演出がかなり成功したものと思われます。
しかしトランプ自身は日本からの要求はすべて無視したと米系メディアに語っており、接待は満足したのかもしれませんが、まともな交渉は一切なく、裏でライトハイザーに茂木大臣が既に全面要求を突き付けられて逃げ場のないところに追い込まれてしまった可能性がかなり高くなっているようです。
自動車輸出の代償として食肉・農産物自由化実現か
市場では8月になると牛丼が安く食べられるのではないかといった悪い冗談が飛び交いはじめています。
TPPなど関係ないと言い切ったトランプの発言から、どうも食肉や農産物で日本は相当な妥協を求められた可能性が高く、8月まで黙っていたやるかわりに完全実施という独饅頭をすでに飲み込まされてしまったのではないかという見方も強まっています。
故意に自国通貨を安くするような補助金政策をとる国には相殺関税を適用するという米商務省の提案もよくよく考えてみれば日本の自動車メーカーの輸出戻し税(消費税分の還付)の話をターゲットにしている可能性もあります。
実はゴルフと相撲観戦の間に具体的な要求を微に入り細に入りつきつけられて、身動きがとれないというのが正直なところなのではないでしょうか。
さすがの安倍総理も8月のいつ結論を出すのかという記者団の質問には答えられなかったようですが、参院選対策で8月まで結果を公表しないことになった今回の交渉の結果は想像以上に厳しいものになりそうで、為替にもかなりの影響を与える可能性がではじめています。
結果TAGはFTAにほかならない
もはや誰も口にしなくなったTAGですが、米国が要求しているのは完全に拡大化したFTAにほかならず、最近では話題にならなくなった為替条項も恐らくもれなく含まれることになるものと思われます。
米国政府は具体的なレベルまで指摘しているのかどうかは不明ですが、実質実行レートで1980年代の1ドル200円に近いのが足元のドル円のレベルとなれば100円切れ以上を求められる可能性は相当強く、この為替の水準調整を日本政府がどのようにしてやるのかにも注目が集まります。
ひとつは債券金利をいじればいきなり円高にシフトさせられることになりますが、これをやった場合には債券市場にも深刻な影響がでることになりますから、迂闊に手を付けることができないはずでとにかく米国との約束を守るためにかなり苦労を強いられる夏がやってきそうです。
米国の意向丸のみの夏が到来か
いまのところ10月の消費税増税も見送るとはひとことも言わない安倍政権ですが、衆参同時選挙と増税中止はまだ実施の可能性はかなり高そうです。
これを持ち出して7月の選挙に勝利したとしても、そのあとの日米通商交渉の結果はかなり景気に影響を及ぼすことになるのではないかと危惧する次第です。
為替に限っていえば、ここからはなにかにつけて円高にシフトするリスクに注意が必要で、大きく戻ったらとにかく売りで待機してさんざんな夏相場に備えることが重要になりそうです。
恐らく正月3日に付けた105円割れ、現実には103円に近いという話もありますが、このレートを再度試しに行くのがいつなのかという話になってきているように思われます。
とにかくここまで米国と交渉をまったくせずに貢物と接待だけで対応する国も珍しい状況で、これが果たして外交なのかについては相当首をかしげたくなるものがあります。
(この記事を書いた人:今市太郎)