トランプ大統領が25日から令和初の国賓として来日し、相撲観戦したり安倍首相のゴルフ接待を受ける話は耳がタコになるほどメディアが報じていますが、それとはまったく別個に24日からライトハイザーUSTR代表が来日し茂木大臣と閣僚級会談を行うことが決まっています。
ライトハイザーはトランプのエアフォースワンに同乗してくる随行団ではなく、まったくパラレルに実務的な交渉のために来日するわけで、果たしてどのような協議になるのかが非常に気になるところです。
日本政府側の楽観的な説明はおかしい
米中の貿易協議の対立が激化する中で日本とEUからの自動車・部品輸入に関し、トランプ大統領は関税賦課を半年ほど遅らせることをすでに明言しています。
これは4月の安倍総理の訪米時のトランプ大統領との二人だけの会談で直談判した末に決定したものであると言われています。
しかし当初の報道では、半年の関税賦課を遅らせる代わりに対米輸出を制限ないし規制することに応じる、つまり台数規制に応じるように日欧に求める大統領令に署名する見込みであるとのブルームバーグが報道したことから相場はかなり微妙な状況になりました。
茂木経済差再生相はこの報道がでた直後に会見し、米国が日本に対して自動車の輸出規制を求めない方針であることをライトハイザーUSTR代表に確認したことを明らかにしています。
これが本当なら自動車関税半年猶予に数量制限なしということで、ずいぶんと米国政府も物分かりのいい対応になるわけですが、相手はライトハイザーです。
そんなにことは簡単に日本側の思惑通りに着地などするわけがなく、実はすでに自動車の数量規制と交換条件に貿易赤字を大幅に減らすなにかを提示されている可能性すらありそうで、この会談は予断を許さない状況になってきているものと思われます。
たとえば農産物や食肉の関税撤廃などが交換条件になった場合、日本の当該産業は大打撃を受けることになりそうですが、安倍政権のことですから簡単に受けて立つことも考えられるわけです。
為替条項も無理やり締結か
またここのところすっかり話題にならなくなった「為替条項」を通商協定に明文化して織り込む話も日本政府側の説明ではまるで回避されたかのようになっていますが、中国との為替の向き合い上、日本だけが回避できるはずはなく、こちらも結果的に合意文書に織り込まざるをえなくなるリスクはかなり高そうです。
こうした内容の片鱗をトランプがツイートなどで口走った場合、いきなりドル円も円高方向に振れる可能性がありますから、この週末は相当な注意が必要になりそうです。
そもそもこの通商交渉を日本政府は当初から「TAG」などと呼んで物品に限るような説明をしてきていますが、米国側はTAGを否定するような対応はしていないものの、事実上FTAの交渉であることは間違いなく、結果的に安倍政権がどのように米国との合意事項を国民に説明するのかについても注目が集まります。
国内メディアはライトハイザーの来日に全く注目していませんが、実際この週末もっとも重要なのはライトハイザーの対日交渉の中身です。
いきなり週明けにそのすべてが詳らかになることはないものと思われますが、結果として大変なことになってしまう危険性は高そうで、交渉の行方がどのようになるかに大きな関心が集まるところです。
ちなみに今回のトランプの訪日では事前に予防線を張っているのか、一切共同宣言等は出さないそうですから、ただ相撲みてゴルフして天皇に謁見してお仕舞だそうで、本当に意味のない訪日になりそうですが、その分ライトハイザーがしっかり働くことになりそうな嫌な予感がしてきます。
(この記事を書いた人:今市太郎)