ドル円は13日週で一旦下値のいいところまで押してみた感があり、次なる下落にはさらに新たな材料が必要になってきている状況です。
週明けはそれなりの戻りを試すこともありそうですが、週明け20日は日本の1~3月GDP速報値が発表となることからこれを受けて、再度10月の消費税増税の実施の可否が判断される可能性が強くなっており、注目されます。
年率で-2%を超える落ち込みなら消費増税さらに延期・中止か
4月26日、連休前平成最後の金曜日に発表された3月の鉱工業生産指数は前月比0.9%となり殆ど市場では話題にならないまま平成を終えるかたちになったものの、今年1~3月の日本経済がゼロあるいはマイナス成長となる公算が極めて高まることとなりました。
景気動向指数でみてもどうやら景気後退入りは間違いないようなのですが、日本政府だけは4月以降の中国経済や世界の景気が回復基調になれば4~6月の鉱工業生産はプラスに回復する可能性もあると仄かな望みを抱いているようで相変わらず消費増税の延期は口にしていない状況です。
最近ではほとんどどこまで本当かよくわからなくなった国内GDPですらも1~3月期は鉱工業生産が前期比2.6%減でありこちらも年率でマイナスになる確率はきわめて高くなってきています。
昨年あたりまでは国内のGDPの四半期速報値などほとんど市場は関心を示さなかったわけですが、今回はこれが年率ベースでマイナスになれば秋の消費増税を撤回する可能性があるだけに非常に注目されるところとなり始めています。
戦後最大の景気拡大となった可能性が高いはずなのに2%の消費税の増税実施すらも覚束ないというのはどうも釈然としないわけですが、実態経済はそれぐらい悪いわけで、あらためて国が発表している経済統計が嘘くさいことを疑いたくなる状況です。
自分で増税を口にしてまた自ら引っ込めて国民に信を問うの不思議
安倍政権は今回増税を延期した場合過去6年でなんと3回も増税延期をしているわけですから、慣れたものですが、そのたびに準備をもとに巻き戻すことになる国内各業界はいい迷惑で本来上げるといった増税ができないならばそれに責任をとるべきで国民に信を問うというのは大きな間違いのはずです。
それでも増税がなければ国民生活は落ち着くはずで実に不思議な状況が展開していることがわかります。
ただ、国際金融市場がこれを好感するかどうかは完全に別問題であり、2014年もムーディーズが突然日本国債の格下げを行ったことからドル円は一旦上昇し、その後下落に転じるという激しい動きを示現する結果となりました。
1100兆円も債務を抱える国ですから適正税収が確保されなくて国債の格付けが維持できないのは当たり前の話ですが、足元の日本の格付けはすでに中国や韓国よりも低いもののなんとかA格を維持しています。
しかしここからさらに格下げを食らった場合BBB格レベルも当然視野に入ってくることになります。
BBB格レベルといいますと他の先進主要国を見回すとイタリアと同列ということになり、日本の危機的財政状況が本格的な問題として顕在化してきた場合には簡単に長期金利上昇幅が3%を超え、企業の資金調達コストに至っては6%超などという驚くべき状況に陥ることもありうるのです。
こうなると日銀が完全に制御できているという長短金利もどうなるか危なくなりJGBは一気に国際的担保価値を失うことにもなりかねず、なにより金融機関の資金調達にも相当な影響を及ぼすことが考えられます。
調達コストの上昇よりは信用収縮のほうを心配すべき状況で、こうしてみますと目先のドル円の上下の問題よりもかなり多方面で深刻な状況を示現するのが格下げ問題ということになります。とにかく週明けのGDP速報値に大注目の一週間となりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)