市場はもはや米中の貿易協議一色でほかのことは殆ど材料にならないという異例の事態に突入していますが、一つだけチェックを入れておきたいのが英国のBREXITのその後です。
基本的に10月31日まで延期となっているわけですから今ごろ何かBREXITに動きがあるのかと思われる方も多いと思いますが、実は5月223日までに離脱できないと欧州議会選挙に参加する法的な義務があり、メイ首相はこの間も必死に労働党と協議をしてなんとか5月22日までにBREXITを完了させることを真剣に考えていたわけです。
5月23日前離脱は完全に消滅
しかしデイヴィッド・リディングトン内閣府担当相は7日に記者に対して23日に行われる欧州議会選挙に英国が参加する必要があるとの見方を示し、あえなく土壇場BREXITも泡と消えてしまった模様です。
思えば2016年6月も国民投票からすでに3年近い歳月が経過したわけですが、BREXITを決定してからは期限を決めてもなにひとつ守れないままに今日に至ってしまっていることになります。
まあ他国のことですから、とやかく言う話ではないのですが、この先を考えますと恐らくろくなことがないままに最終的には離脱自体ができなくなるのではないかという危惧の念も高まる次第です。
もちろん英国民がそれを望むのであれば、ずいぶんと無駄な時間を費やすことになってしまうわけですが、それでもこの茶番劇になにかしかの意味があったということになるのかも知れません。
しかしこの3年におよぶBREXIT騒動で経済的に英国が失ったものはかなり大きく、特に個別の産業で英国の判断を待っていられなかった業態が英国から自主的に去っていったのは、金額規模の算定こそされていませんがかなり大きなものになってしまったことと推測されます。
長期的にみれば結局ポンド安か
一応期限延長となったわけですから、また10月末に向けて議論が進むことになるのでしょうが、これでうまく離脱できないとなると結局のところBREXIT大失敗という結果だけが残りそうな気がしてなりません。
というのも3年かけてまったく国境のソリューションを設定することができなかったのですから、ここから半年先延ばしにしてなにか決着のつく部分を期待するのには無理があるからで、そもそもメイ首相がいつ辞任するのかを含めて今後のBREXITに向けた体制がどうなるのかも不透明な状態でうまくいくとは到底思えないところに英国はたたずんでいるものと思われます。
週足でみますとBREXITを回避したことから決定的な下落局面よりはだいぶポンドドルでも戻ってきていることは確かですが、BREXITが決定してしまえばまた売られることになるでしょうし、もし回避されれば一旦戻ってもまた時間をかけて下落していく運命にありそうです。
とにもかくにもポンドはこれまでの思惑から激しく上下に動く時間帯を超えて日常の状況にもどりつつありますので、ひところに比べれば取引リスクもだいぶ軽減したものと思われますが、その分取引妙味というものはかなり失われてきているように感じられます。
ここから取引していくのであれば、ドルとの対比がわかりやすい「ポンドドル」のほうが動きは予測しやすそうな状況です。
■ポンドドル週足~BREXIT投票以降の推移
それにしてもポンドドルやポンド円についてはもっと異なる結果を期待していたわけですが、為替的な視点でみるとそれほど面白い結果にならずに一旦収束しようとしているわけで、結構この間失敗してしまったトレーダーの方も多かったのではにかと思われます。
もちろんどの通貨ペアで勝負するかはそれぞれのトレーダーの考え方次第ですから、いいとか悪いとかいう話ではないですが、投げと踏みの応酬が延々続く相場はそれなりにストレスも多く、利益的に得るものがないと本当につらい時間を消費することになるため、果たして自分の性格や取引手法に向いているのかどうかについてはよく考える必要があることをあらためて感じさせられました。
(この記事を書いた人:今市太郎)