相場は米中貿易協議と10日予定されている対中25%関税の実施が行われるかどうかを見極める動きとなってしまい、東京タイムに109円台後半まで円高が進んだドル円もそれ以上は走らずに様子を見る動きになっているようです。
おそらく10日を前にその結果は見えてくることになるでしょうからとにかくそれを待つというのが相場の状況なのではないかと思われます。
下値を買い下がるのは本邦のGPIFなどの資本筋
109.800円から下、109.700円や109.600円台には本邦の資本筋、端的にいえばGPIFなどが外債を購入するために相当量のオーダーを置いているようで、これが消化されない限りは109円台初頭までドル円相場が下落することは難しそうな状況のようです。
しかし逆に多くの市場参加者がこのバリアを超えて円買いを進めた場合には、その下にストップがでてくることから一気に108円台にまで押し込まれるリスクもでてきそうです。
〇ドル円4時間足推移
今週月曜日の朝にギャップダウンではじまった相場ですが、今のところ完全には窓を埋めるカタチにはなっておらず、当面この窓の部分が抵抗ラインになりそうな気配となってきています。
JPモルガンが予想する国債満期償還による外債投資へのシフト
JPモルガンが先ごろ明らかにしたところによりますと、今年度中に日本国債44兆円相当が償還期限を迎える見通しでもはや「JGB」では利益にありつけない機関投資家や邦銀勢がこの資金を外債投資に回すことから、ドル円はこれが円の重しになるという見方を強めています。
たしかに最近外債投資を行う本邦勢は利益を重視することから、本来はヘッジでドル円で円買いすべきところをオープン外債を裸で買っているケースが増えており、この需要と本邦企業のM&Aの需要がドル円の下値を支えるとの見方は市場でもかなり強くなってきています。
実際にドル円は大きく値を下げるとそれなりの買戻しが入るようになっており、こうした勢力は買い上げることはしないものの、下落するとどこからともなく登場して下値を持ち上げる働きをしていることは間違いなさそうです。
問題は外債の下落と円高
しかしここで大きな想定外となっている話が外債自体の価格の下落で、数年前も米債に特化して投資を行った本邦の地銀勢が米債金利の上昇、つまり価格の低下に耐え切れずに年度末前に大量に売却、資金を円転させたことから妙にドル円が下がるという事態が示現したことがありました。
また、トランプ政権が進めようとしているドル安政策でドル円がまさかの100円割れ定着というような動きにでもなれば今度はこうした本邦勢が一斉にドル円を円買いせざるを得ない状況に追い込まれることから、たとえJPモルガンの予測が曲がっていなくてもその後のドル円は必ずしも円安には進まない可能性も考えられる点はあらかじめ認識しておく必要がありそうです。
このゴールデンウイーク、異例の10連休ということで一時的に海外旅行に伴うドル需要として1900億円がドル買いに動くのではないかといった報道が4月に見られましたが、確かにドル転は行われたのかも知れませんが、カード決済などであればドル需要はここから先に出る部分でもあり、相場を動かすようなドライバーにはならずに連休を終えています。
こうした金融アナリストの見方というのは嘘とは言いませんが、結果的に予想通りにはならないことも多く、話半分で考えておきませんとそのまま鵜呑みでトレードすると大損をすることもある点はあらかじめ理解しておきたいところです。
いずれにしても機関投資家のドル円買いは一時的には買い切り玉と同じ効果を発揮するわけですが、厳密には期間をかなり離れたところで再度円転させてくるわけですし、利益部分も円転を強いられますから完全な買い切り玉として考えるのには無理があります。
また外債投資下手な本邦勢は米国の社債などジャンク債に近いところにイールドハンティングから平気で買いを入れてきていますので損失がではじめると仕方なく売りに回って資金を引き揚げ円転するリスクを十分に持っていることも意識しておかなくてはなりません。
今週はあっという間に週末になりますが、引き続き米国政府の対中国政策の結果を見極めながら次の手立てを考えることになりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)