トランプ大統領が対中関税率を2千憶ドル規模で10日から25%に引き上げると怒りのツイートをしてから1日半近い時間が経過しましたが、東京タイムでもっともはげしく売られたドル円はNYタイムではそれほど下値を模索することもなく連休明けの東京タイムに戻ってきています。
しかし連休が明けても一定のドル円の買いは見られたものの空いた窓をすべて埋めるところまで戻る動きは見せておらず、市場はまだよくわからない米中の交渉の行方を見守る状況になってきているようです。
意外に下げなかった米株
米中交渉の問題でもっとも注目されたのが米株の動向でした。先物では一時的に500ドル以上の下げを示現したNYダウでしたが最初は確かに大きく下げたもの引けに向けては大きく買い戻された形となり、NYダウは先週末比で66.47ドル安という比較的軽微な安値で相場を終えられたのはかなり意外な状況といえます。
東京タイム日経平均も当然下押しから始まってはいますが、今のところなんとか2万2000円台をキープしており、それほど驚くべき下落にはなっていません。結局8日の中国からの交渉団が渡米を取りやめるといった決定的な報道がでなかったことや現状では単なるトランプの恫喝なのではないかという憶測もあるようで、こうした状況が楽観的な見方をまだ市場に残していることが窺われます。
またライトハイザーが交渉を打ち切らないとしたことも楽観論にプラスに働いているようです。
10日25%関税実施ならあらためて株式相場は下落か
アルゴリズムやAI実装のコンピュータが相場を席捲しているせいなのか、どうも市場にはなにかと楽観論が渦巻く時間帯が多くなっていることを強く感じます。
株価は妙な期待感なのかあまりリスクを感じないのかかなり買い戻されましたが、対中交渉の責任者であるライトハイザーは米政府は10日に対中関税の引き上げを明確に口にしていますし、交渉に同席してきたムニューシン財務長官も中国との貿易協議の方向が大きく変わったと発言していますから、相場は再度下方向に向かうリスクが一段と高まりそうです。
アルゴリズムの特性なのか事実が判明するとはじめてそこから売り込まれるという動きが非常によく見られるのはかなり気になるところです。
また株式投資をするファンドやウォール街の連中もパッシブ投資が多く指数取引であることから数字が悪くなれば自動的に損切するだけの簡単な動きをしているように見受けられ、一旦相場が悪い方向に向かいだすとどんどん損切が増えてそれが加速されてくるように見えるのも気がかりです。
人が裁量取引をしていますと危ないと感じるリスクは数字では測れない部分も多分にでてくることになるのですが、アルゴリズムとコンピュータにはそうしたインタンジブルな世界は全く意に介さないようでこのあたりが人の裁量取引がアルゴを上回ることのできる大きな機会になるのかもしれません。
いずれにしても米中交渉は我々が感じている以上にうまくいっておらず、一旦交渉が決裂すれば中国からの輸入品2000億ドル相当への関税率を現行の10%から25%に引き上げる計画に加え現在は関税の対象外となっている3250億ドルの中国製品についても関税率の引き上げに踏み切る可能性はありそうで想定外の全面対決となることも十分に認識しておく必要がありそうです。
関税率引き上げ実施が正式に決まれば米株で中国関連のビジネスを行っている企業株価が大きく下落するのは時間の問題で、債券に資金が逃げ込むことからドル円も大きく下落する可能性は十分に残されています。
本邦の輸入勢もまだ下がるとなればここから慌てて買い向かわないことも考えられ、想定以上にドル円相場が下落することも視野に入れた取引を行う必要がでてきているようです。
(この記事を書いた人:今市太郎)