国内では10連休の影響でまとまったスワップが付与されることから非常に人気が回復しているトルコリラですが、トルコの政治的醸成や中央銀行の政策を見ていますと必ずしも手放しには喜べない状況が続いていることがわかります。
ややもすればまたトルコリラが大きく値を下げるリスクに直面しているのです。スワップで一定の利益がでたら一旦リカクしてまた入り直すといった臨機応変な対応をしませんと結局どこかでまた大きな損失を被りかねない状況です。
トルコ中銀の外貨準備の問題がかなり深刻
英国のファイナンシャルタイムズがトルコ中央銀行は純外貨準備を積み増すために過去1カ月、市中銀行との短期スワップ取引を利用していたと報じたことから、外貨準備のレベルが非常に危惧されるようになっています。
正確なところはトルコ中銀が開示するデータ待ちの状態ですが、リラ売りを回避するために異常とも思えるほど売りスワップを高くするなどの奇策に出てきたこの中央銀行のやり方が、いよいよ行き詰まり始めている可能性が高く、ここからの取引はかなり慎重にすべき状況に陥っているようです。
外貨準備は自国の通貨が激しく売られるといったまさかのときに買い支えるための原資として機能するものですから、この準備率が低いということは自国通貨を守ることができず暴落を余儀なくされることを示唆するものといえます。
実際90年代後半のアジア通貨危機では外貨準備率が十分でなかったタイが結果的に暴落にバーツの暴落に直面することになりました。
金利は高いトルコリラですが、為替のオペレーション的にはかなり危ない橋を渡ることになってしまうのです。
政治的にも危うい状況
トルコはロシアと接近する外交を進めておりロシア製ミサイルを購入していますが、欧州圏からはNATOのレーダー網を使ってロシア製ミサイルを飛ばすのはあり得ないとの批判がでています。
また米国もF35の売却をストップさせており、トルコは代わりにロシア製の戦闘機購入をちらつかせるなどエルドアンの政治的な駆け引きは、決してトルコリラにプラスに働かない状況を示現させはじめています。
原資は少なくて済むトルコリラだがスワップだけならドル円が安全
トルコリラはもともとその価格が安いことから、1万通貨購入しても10万通貨購入してもスワップでみたときの投資対効果が高いのは大きな特徴となっていますが、キャピタルロスのリスクは尋常ではなく、金利の高いだけのことはあるリスキーさが常に付きまとうことになります。
暴落直後からの回復局面では、確かにうまくワークする時期もあるわけですが、年間を通じて購入してただ放置しておけばそれで儲かるという通貨ではないことは相当認識しておく必要があります。
1万通貨で120円見当のスワップが支給されるならドル円で2万通貨買って140円程度のスワップを確保するほうがリスクとしてはかなり小さくなり、資金が許すならこの時期にトルコリラを積極的に購入するのはいかがなものかと思われます。
もともとFXはリスクのある取引ですから絶対安全な売買というものなど存在しませんが、あえて火中の栗を拾いにいくようなことをする必要もなく、リスクに対する発想は相当重要であることをあらためて認識されることをお勧めしたいと思います。
トルコリラ円のスワップ狙いトレードは判で押したように、日本人個人投資家はストップロスを置かないうえに相場が下落すると買い増しをするケースが非常に多くなっています。
スワップのためという大義名分で本来FXでやってはいけないことを積み上げてしまうというのは絶対避けたい行為です。
本来外国為替ではスワップの獲得は大きな目的ではありますが、足元の相場状況は必ずしもこれがうまく機能していないこともしっかり認識するべきでしょう。
(この記事を書いた人:今市太郎)