今週の為替相場はとにかく英国のBREXIT関連の動きがどう決着するのかに注目が集まり、大きく動きそうな気がまったくしなくなっていますが、もうひとつそれと並行してどうも釈然としないのが「米中の貿易協議の行方」です。
トランプ大統領はしきりに交渉が進展していることを強調しています。
しかし、5日の金曜日に中国の劉鶴副首相との会談の冒頭で記者団に「課題となっていた問題のいくつかで合意が得られたが、まだ見解の相違もある」といいつつも、「4週間以内か、あるいは前後する可能性もあるが、最終的になんらかの記念碑的な発表を行う可能性がある」とかなり期待を持たせる発言をしています。
ここのところ延々と進展していることを口走っていますが、実際に前に進んでいるのかどうかは今一つよくわからない状態です。
ここから4週間後となるとちょうど日本は史上初の10連休に突入している最中で、これが終了するかどうかぐらいの辺りに合意の可能性があることをしきりに示唆しています。
しかし、これがさらに伸びる形になり、結果一旦合意に至らなくなったと米朝首脳会談のような結果が示現した場合、株式市場に与える影響も大きそうで、意外な火種になりそうな状況です。
ライトハイザー発言のトーンが結構異なる
今回中国の構造的問題を解決したいとするライトハイザーの意向は特定の政党に収まらない米国議会全体からのサポートを受けた交渉になっているとも言われ、とにかく早期に成果を出すことで中間選挙を有利に展開したいというトランプの打算的な姿勢とはかなり一線を隔した動きになっていることが明確になりつつあります。
ここのところの集中会談を終えたライトハイザーは、依然として中国との間に大きな隔たりが残っていることを示唆しており、知財関連の交渉が簡単に進まないことを匂わせています。
中国も賢明に交渉に応じている雰囲気は醸成していますが、結局のところ交渉と遅らせたいだけの可能性は捨てきれず、6月以降まで結論が持ち越される可能性すらではじめてきているようです。
ライトハイザーはなんとか協定の合意に罰則規定を入れたいようですが、習近平のほうにもメンツがあることから、まずその部分で隔たりが埋まらないという話もでてきています。
結局関税はそのまま継続という可能性も
米国サイドは今回の交渉が一定の合意をみてもすでに履行している関税の増税は簡単に取り下げず、2025年ごろまで継続させる可能性も示唆しています。
こうなると本当に本質的な合意になるのかどうかも怪しい状況で、トランプにしてみれば2020年の大統領選挙に成果物として差し出したいのでしょうがそうは問屋が卸さないことも考えておく必要がでてきているようです。
ライトハイザーは80年代からこの領域の交渉にあたっている関係もあって議会とのパイプもかなり強く、単純に共和党というだけではなくオールアメリカで中国と対峙していく方向を強く打ち出しており、それに対するサポーターもかなり多いと言われています。
それだけにトランプのご機嫌だけとって適当に終焉させるようなことはまったく考えられず、一説には不協和音は中国だけではなくトランプとライトハイザーの問題であると指摘する向きも少なくありません。
やはりこの米中問題も何等かの解決がつかないことには米株も昨年10月の高値を抜いて上昇してくことは期待できない状況で、そうこうしているうちに1~3月の決算の発表で結局沈み込んでいくことも予想されはじめています。
今年は市場に大きなテーマがでまわりますが、結局何一つとして明確な結論がでないままずるずると進行しており、これが為替相場の膠着状態を生み出している原因にもなっているようです。
なんとか前に進むことを期待したいところですが、逆に延々と日柄調整する相場が続くことも覚悟しておく必要があるのかもしれません。
(この記事を書いた人:今市太郎)