アルゴリズムが過剰に反応するのが大きな原因なのか、一旦テーマになった問題ものど元過ぎれば何事もなかったかのように上昇するというのが最近の米株市場の動きです。
日本の株価は上昇したといってもじり高で、下落しない程度で米株の勢いに追随しないのも相場の難しさを増幅させている感があります。
BREXIT騒動が決着をみないのでユーロも大きく売るわけにもいかず、相対的な関係のなかでドルが強く、リスクオフになると円高も加わることから、ドル円は上方向に大きく走るでもなければ下値も堅いというトレーダー泣かせの相場が継続中です。
下手をするとこのまま月末まで膠着した狭いレンジ相場が延々と続きそうで、スキャルピングでとるにしても相当枚数を増やすなど工夫をしないと利益を積み上げられないという別の意味で難しい相場が続いています。
そんな中で米債に現れた逆イールドは、FRBが自ら積極的に仕掛けているもので恐れるに足らずといった見方が頭をもたげ始めてきています。
短期金利は上昇させ、長期はあえて抑え込むFRBのコントロール
FRBは2011年にも短期債を売って長期債を買うといういわゆる「ツイストオペ」を行い、作為的にイールドフラット化もしくは逆イールドを形成する動きを行った実績がありますが、足元でもこの作戦を敢行しようとしているのではないかという見方がにわかに市場に広がり始めています。
米国の金融市場は海外から入ってくる資金が大きな意味を持ちます。単純に金利全体を下げてしまうと商売にはならなくなることから、短期金利は高めに誘導する代わりに10年債以降の長期金利はあえて低金利に誘導し抑え込むことで企業の資金調達コストは低下し、住宅ローン金利なども押し下げられることから国内需要を冷え込ますことなく、むしろ刺激策になるといったかなり楽観的な見方がこれにあたるのです。
実際ここのところのFRB幹部の講演などにおける発言を聞きますと、この動きを本当に実現かつ維持させようとしている気配が強まっていることも事実です。
実はこのお手本になっているのが「日銀の金融政策」で中央銀行が完全に長短金利をコントロールしているということがFRBにも影響を与えていることがわかります。
市場で国債膨大に買って抱えることで金利を制御している日銀
もともと中央銀行は短期の金利は自らの政策でかなりコントロールできるものの、長期に関してはほとんど制御できないというのが黒田緩和の始まる前の日銀のホームページにもでかでかと出ていたわけです。
市場から国債を恐ろしいほど買い上げて事実上債券市場が開店休業状態に陥らせることで、これを実現している日銀と、米国のFRBが直面している状況はかなり異なるものがあり、本当に長期金利を短期よりも下げた状態を制御し続けることができるのかどうかに注目が集まります。
いい逆イールドなんて本当にあるのか?
巷ではいい逆イールドと悪い逆イールドの話がやたらと出始めてきていますが、果たしていい逆イールドという状態が本当に中央銀行によってコントロールできるのかについてはまだよくわからないのが実情です。
ただ一つ言えるのは、金融機関は全くこれでは食べていかれなくなり、結局危ないジャンク債市場にイールドを求めに行くことになるため経営がずたずたになるということだけは確かです。
するが銀行の「かぼちゃの馬車・シェアハウス」に対する過剰・不正融資などもすべてここから始まっていることを考えますと、決して逆イールドが健全な金融政策とは思えない状況です。
相場強気論が再度台頭
どうも足元ではまた強気論が頭をもたげてきているようで、2020年の大統領選挙の前年だけに株価は大崩れしないという強気派が市場で台頭し始めている様子がうかがわれます。
相場はバブルの最後がもっともよく走りよく上がるといいますが、今の米株の上昇がさらに史上最高値を更新する本物の上げになるのかはまだ断定できないところにあります。
日本もバブルの末期、同様の強気論が市場で聞かれましたが、押し目に見えた相場の下げは結局戻らずに下落したというかなり辛い過去の経験があるだけに迂闊に信用はできないのが正直なところです。
ドル円にもかなりの強気論がでてきていますが、政治的影響が強いこの通貨ペアがここから青天井で上昇すると決め込むのには相当躊躇させられます。
4月後半から5月にかけて流れが変わるのかどうか引き続き注目していきたいところです。
(この記事を書いた人:今市太郎)