新元号が発表となった4月1日の朝、日銀が短観を発表していますが正直あまり話題にはならずにスルーされた状態です。しかしそこで開示された内容は結構シリアスな内容になっています。
日銀が実施したの企業短期経済観測調査・通称短観の3月調査で、大企業・製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)はプラス12と、昨年12月の前回調査から7ポイント悪化。この悪化は2四半期ぶりで、悪化幅は2012年12月調査(9ポイント悪化)以来6年3カ月ぶりの大きさとなっています。
この内容はすでに当コラムの中でもご紹介していますが、戦後最長の景気拡大を謳っているわりには企業の景況感はまったくよろしくないところに差し掛かっていることがはっきりし始めているというわけです。
とくにDIが大きく落ち込んでいるところをみると、内閣府が発表している内容と実態経済はかなりかけ離れていることが容易に推測できる状況です。
市場では4月の日銀会合での追加緩和を期待
安倍政権はまたしても消費税率上げを見送り、それをネタにして衆参同時選挙をかましてくるのではないかという見通しが市場に渦巻いていますが、今のところ麻生財務大臣もそのまま粛々と利上げの予定としており、この発言が本当ならば消費税増税は予定通り10月実施の予定となりそうです。
しかし7月には少なくとも参議院選挙があるので、安倍総理からの依頼を受けた黒田日銀が4月の日銀政策決定会合で追加緩和を繰り出してくることに市場参加者は非常に期待をし始めている状況です。
2014年10月末の黒田バズーカ2はせっかく消費税上げを支えるために撃った追加緩和策だったわけです。しかし、その後安倍総理が簡単に梯子を外して見送りを決め込んたことから黒田総裁は外には洩らさなかったものの相当激怒したといわれています。
この経緯を踏まえると4月に黒田バズーカが投入されるとすれば、最低限消費税率上げだけは安倍政権がコミットすることが必要になるものと思われます。
実際に何が緩和措置として出せるのか
まず株価重視の安倍内閣のことを考えれば、ETFの買い入れ等を増やすことが考えられます。足元でも相当なレベルにはなっているものの、健全か不健全化といった議論を横に置いておけばまだETFを買い支えることは可能なのではないかと思われます。
ただ、黒田総裁は依然として景気が穏やかに拡大中としており、しかも2019年後半には中国と欧州の経済が持ち直すとの見方を示しており、やんわりと追加緩和の可能性を否定する発言をしています。
実際問題、内閣府が出している嘘か本当かわからないGDPと比較してみても557兆円規模にまで膨れ上がった日銀の資産総額は、米国のFRBが411兆ドル・日本円にして460兆円弱でGDPの25%程度なのと比較しても爆発的な規模であることは間違いなく、このまま資産を増やしていくことをさすがによしとはしていない可能性はかなり高くなります。
足元の安倍・黒田の政策はまるでMMTの実証実験を先行してこの国で行っているようなところがありますから、そのままやり続ける可能性ももちろんありますが、少しでもまともな感性の持ち主ならそろそろ限界が近いことは相当意識しているのではないでしょうか?
問題は何もなかった時の株式市場の反応
そもそも国内では選挙があるときは、株価は下がらないという強いアノマリーがありますから、7月に向けて日経平均は上昇しやすくなるものと思われます。
しかし、この4月25日、まさに10連休直前の会合まで株式相場が期待から上昇し、何も起こらずに失望売りがでることになれば連休期間中に必要以上に売り込まれることになります。
現物株が売れない分ドル円の売りで対応する投機筋が登場することも考えられ、追加緩和が出なかったときのほうがかなり大きな相場のリスクになりそうです。またこれと時を同じくするように日米通商交渉も開催されるわけですから、妙な形で円高材料がそろった場合には今回の史上最大規模の10連休は為替にとっても想像以上のリスクになることが予想され相当な注意が必要になりそうです。
過去にも期待で上げて無風で大きく下落ということを経験している日銀政策決定会合ですから、同じことがまた起こる危険性は十分に認識しておかなくてはなりません。
(この記事を書いた人:今市太郎)