読み込み中...とうとう3月29日の期日を超えてしまった英国のEUからの離脱ですが、なにやら連日のように議会では投票ばかりが行われており、何が決まるのか何も決まらずに、結局合意なき離脱に突入するのかまったくよくわからない状況に陥っています。
為替市場ではもっぱらポンドが大暴落するのか、何とか九死に一生を得て大きな戻りを試すことになるのかどうかだけに注目が集まりますが、実はそのほかにもきわめて大きな問題が潜んでおり、市場関係者の中でもデリバティブに精通した向きはかなり危機感を高めている問題があります。
依然としてロンドンに集中したままの金融デリバティブの仕組み
2008年9月のリーマンショックの相場暴落の時に、デリバティブ取引も非常に不安定な状況を示現することとなったのは記憶に新しいところですが、この経験を踏まえて多くの国は店頭デリバティブ取引を清算機関を通じて行うように義務付けるようになり、結果としてこの機関はロンドンに集中したままの状態になっています。
大手の金融機関はすでに英国からフランスなどに拠点を移すといったリスクヘッジ策をとっていますが、当該店頭デリバティブ取引の清算機関はほとんどロンドンから移動しておらず、上場先物を除く金融派生商品や金利スワップ、CDAなど店頭デリバティブ取引がいきなり英国が合意なきブレグジットに突入した場合不測の事態に陥るリスクを心配する声が高まりつつあるのです。
ロンドンで扱う店頭デリバティブ元本資金は6000兆円超
通常こうした清算機関は3か月前に契約企業に対して契約の解除を通知することになるのが慣例となっていますが、いきなり合意なき離脱となると英国以外の欧州圏の国に存在するクライアントとの取引に支障が出るリスクは残っており、本当に何も起こらずに済むのかよくわからない状態が続いているといいます。
EUはこうした状況に配慮してデリバティブの清算機関に問題が起こらないように守る措置をとることを表明しています。
しかし、何分だれも行ったことのない事態ですから、想定外のことで決済等ができなくなったり、6000兆円超ともいわれる元本資金が不安定な状況に陥るとリーマンショック時の6200兆円とされるデリバティブの想定元本資金に迫る規模であるだけにかなりリスクが高まることになりそうです。
国内の金融アナリストはもっぱらフローチャートでここからの英国議会の動きから選択肢を解説することだけに終始しているように見えますが、実はそのバックエンドにおけるこのデリバティブ取引の問題は非常にクリティカルな状況に陥る可能性がありそうです。
ドイツ銀行は大丈夫なのか？
デリバティブというと非常に嫌な予感がするのがコメルツ銀行との合併を探り始めている「ドイツ銀行」の存在です。同行に大きな影響がでるような不測の事態に進展するようなことになれば欧州発で前代未聞の金融危機に陥る危険性もあるわけです。
ドイツ銀行のデリバティブ取引の総額は7500兆円規模ともいわれますので、ロンドンの取引のかなりの部分もドイツ銀行が絡んでいる可能性が高く、こちらも非常に心配です。
突然の合意なき離脱ではもっぱら英国の国民の社会生活のリスクの話が前に出てきがちですが、金融市場で考えたときにリスクがすべて洗い出せているのかは極めて不透明であり、まったく想定したいなかった事態が起きることには一応注意しておく必要がありそうです。
実際に英国の議会はどこを落としどころとしてメイ首相が辞任した場合、だれが後継者としてどのようにEUと交渉をするのか全く明らかにはなっていませんが、金融市場には隠れたリスクが地雷として埋まっていそうで何も問題が起こらないことを切に願うばかりです。
（この記事を書いた人：今市太郎）
