為替相場は大きく動くのがポンドしかないことなどから、スワップ狙いのトルコリラ円のロングの取引が昨年夏の暴落前に近いところまで回復しているといいます。
しかし直近ではいきなりトルコリラが対ドル、対円で大きく値を下げることとなっており、やはり金利が高いだけで取引をすべき通貨ではないことが改めて明確になりつつあります。
トルコリラ急落原因は国民の外貨買い
22日に突然大きくトルコリラが下落した原因として浮上しつつあるのがトルコ国民の外貨買い、とくにドル買いが原因という見方が強まっています。
トルコの個人投資家はリラ建ての預金が物価の上昇率よりも低いのを嫌気して、ドルなどの外貨預金に大きくシフトしており、それがトルコリラ売りにつながっているというのです。
本邦個人投資家は1万通貨ペアのトルコリラ円で123円以上もスワップポイントがつくのに大喜びの状況ですが、当のトルコの国民は外貨へと資金を逃がしているというまったく逆さまの状況が示現しているわけです。
22日対ドルではなんということもなく6%も下落しているわけですから、トルコリラを買い向かうというのは相当リスクが伴っているということ忘れてはなりません。
トルコリラ円1時間足 Data みんかぶ
これは将来的にはますますトルコリラが安くなる可能性を秘めているわけですから、のんびりロングをしている場合ではないことはあきらかです。
よくFXにファンダメンタルズは関係ないと豪語する人がいますが、確かに米国やその他の先進主要国であれば少なからず何が起きているのかの概要は日ごろメディアのニュースを見ていてもわかる話です。
しかし、トルコのように常時戦闘国であるシリアに隣接し、エルドアンがロシアと米国を両天秤にかけて微妙な外交を展開している点は事前に十分な理解をしておく必要があるものと思われます。
トルコ当局、JPモルガンを調査という不可解な報道も
22日の暴落を巡ってはトルコの通貨当局もかなり神経をとがらせているようで、JPモルガンチェースが事前にアナリスト2人が対ドルでのリラ売りをリポートで推奨したことを強烈に非難しています。
このレポートは投資家を誤った方向に導き、操作する意図があるというのがトルコ当局の言い分ですが、もはやこういうケチのつけられ方をしてしまうと、まともな自由売買ができる通貨ではなくなってしまうのも非常に気になるところです。
国の通貨当局はさまざまな方法で自国の通貨を守り抜く役割を果たしているのは事実ですが、この手の金融機関のアナリストへの攻撃はもはや末期的であり、まともに投資すべき通貨として考えるのはいかがなものかというところまで来ているようにも見受けられます。
ストップロスを置かないロングはフラッシュクラッシュで大惨事に
今年の正月3日ドル円がフラッシュクラッシュで大きな下げを演じたことは記憶に新しいところですが、実はトルコリラもかなり大きな被害にあっています。
とくに取引所取引で追証を求められたケースはトルコリラが非常に多かったようで、とにかくなにがあってもストップロスを置かずに買い向かうという個人投資家の姿勢が完全に裏目に出ていることがわかります。
正月3日の場合には業者によってその価格は異なっていますが、トルコリラ円は18円近くまでつけていますから、レバレッジをそれなりにかけていた場合には、やはり持ちこたえられずに強制ロスカットすら飛び越えて下落してしまう状況になってしまったわけです。
確かに足元の相場は動きませんから、多くの個人投資家も店頭FXの業者サイドもかなり苦しんでいる状況が見受けられますが、そうかといってトルコリラに手を出すのは想像以上にリスクが高く、想像する以上にリスクが高い通貨であることを再度認識する必要がありそうです。
トルコは31日にも地方選挙が予定されていますが、またここでひと悶着ありそうな状況であり、トルコリラをロングにする安心感は全くありません。
国内ではすでにドル円でも1万通貨で70円以上のスワップがとれる時代ですから、枚数を増やすことでこうした安全通貨でスワップを稼ぐというのも検討対象にすべきであろうと思われます。
なによりスワップ狙いはストップロスを置いて損切しないということが常態化しているようですが、これは大きな間違いであることもしっかり理解する必要があります。多額のキャピタルロスがでては結局証拠金を減らすことになりかねません。
(この記事を書いた人:今市太郎)