昨年1年間ほぼずっと下落をしてきた「上海総合指数」は年明けから反転上昇を続けとうとう3000ポイント超までその水準を回復させています。
足元では米中の貿易協議がなんとか解決するのではないかといった楽観論が高まっているのに加え「MSCI」が中国株の比率を増やすこととなったのを市場が好感しているものと思われますが、実はそのかげで社債市場がとんでもないことになりつつあります。
国のお抱え企業とみられた中国民生投資集団のデフォルト
最近の社債を取り巻くデフォルト騒ぎでその規模からもっとも注目されたのが「中国民生投資集団」通称中民投のデフォルトです。
この中国民生投資集団は2014年に中国当局である中華全国工商業聯合会が主導する形で中国国内の大手企業59社が出資する形でスタートした鳴り物入りの民営企業で、政府からも全面的な支援を得たいわゆる政府のお抱え民間企業です。
この会社、当初は太陽エネルギーパネルや鉄鋼物流、船舶の3つの分野に集中投資をすすめ中国内で群雄割拠状態にあったこの分野を統合していく役割も担っていたといわれています。
しかし、主力事業の太陽光発電に対し2018年に国家発展改革委員会のエネルギー統括部門が突然ブレーキをかけるような動きに転じたことから、同社の経営状況は一変することとなります。
政府が一転して政策を見直し、太陽光発電所建設計画がすべて一旦停止としたことから急激に経営が行き詰まり、年明けの1月29日に満期日を迎えた日本円にして486億円あまりの債券の返済が滞ったことから、あえなく債務不履行となってしまったというわけです。
旧正月の直前であったことからあまり大きな話題にはなりませんでしたが、同社の株価は旧正月明け以降大きく下落している状況です。
まだまだ飛び出す社債市場のデフォルト
この中民投のケースはほんの一例に過ぎず、今年中国では国内民間企業が社債の大量償還を控えていることから、かなりデフォルトリスクが高まるものとみられています。
社債発行企業は上場企業が多いわけですから株式市場にダイレクトに影響を及ぼすことは間違いなく、足元で上海株が上昇している状況は素直に喜べないのが実情です。
格付け会社フィッチの調査では2018年だけで45社、計117銘柄の社債がデフォルトに陥っているといいますから、もはや状況は尋常ではなく、今年中に償還となる4026億元、日本円にして6兆6308億円規模の不動産関連社債が無事に満期支払いを実現できるのかどうかにも注目が集まりはじめています。
中国国内企業のデフォルトは世界的に影響がなかったが・・
これまで中国国内上場企業関連のデフォルトというのは中国本土の株式市場には影響を与えてもグローバルで大きな影響がでることはほとんどなく、なんとなく中国政府にもみ消されることが多かったわけです。
しかし、海外資本が中国本土株への投資額を増やす状況下ではより大きな影響が示現するのは時間の問題で、日本同様本当の国家統計を開示せずに景気の実情がいまひとつよくわからない中国発で世界の金融市場にいきなり影響がでてくるリスクにも相当注意すべきところに差し掛かっているといえます。
どうも足元の相場の動きはファンダメンタルズの裏付けなしに期待だけで楽観視から上げている印象が強いわけです。
しかし、この雰囲気になんらかのグレーリノ、つまり市場において、高い確率で存在し、大きな問題を引き起こすにもかかわらず、軽視されがちな材料がいきなり顕在化しはじめた場合には、大きな下落要因として機能してしまうことを相当意識しておくべきではないでしょうか。
(この記事を書いた人:今市太郎)