米中貿易協議は米国、中国ともに成果があったと説明をしており、3月1日期限の関税の発動もなんとか延期の運びとなりましたが、米系のメディアから聞こえてくるトランプとライトハイザーの確執は結構激しいものがあり、ややもすればライトハイザーまで解任しかねない雰囲気がではじめてきています。
1月当初は相当信任が厚いとの評判だったライトハイザーですが、気に入らなくなりはじめるといきなり辞めさせたくなるトランプにはかなりのリスクが存在することを改めて感じさせられます。
とうとうライトハイザーと小競り合い
ライトハイザーはこのコラムでもご紹介している通り対外経済交渉ではすさまじい実績をもつハードネゴシエーターとして知られる人物です。
当初はトランプからも対中交渉については絶大な信頼を得て、1月末からはとにかくライトハイザーが責任者として中国と対応をはじめたことからかなり厳しい対応が行われるのではないかといった観測も多く聞かれていました。
トランプ自身は中国からの輸入が増えてそれなりに赤字が解消できればよしとする部分がかなり大きかったようですが、ライトハイザーはそうしたうわべだけの対応では過去20年間近く放置されてきた中国の暴挙をただすことができず、結局元に戻るだけであるとして構造的な問題の解決を一気にはかる姿勢が強いことから両者の間には自ずと姿勢に開きがあることは当初から指摘されていた部分でした。
しかし今回会議が延長に次ぐ延長でなかなか決着しないことや覚書を取りかわす件に関してトランプがライトハイザーを批判したことなどから、かなり関係がぎくしゃくしはじめたことが顕在化しつつあるというわけです。
ツイートがあれば百人力のトランプにも劣化が露見
ホワイトハウスはトランプ就任後アサインされた人間の6割が辞任するといった異常事態で、今でもそこら中のポストがスカスカで実務をやる人間がいない中でトランプだけがツイッターのみを味方につけて丁々発止と世界的な外交を切り抜けてきた感がありました。
しかし超大国で一筋縄ではいかない中国との交渉ではやはりエキスパートが必要なのは間違いなく、ここで万が一ライトハイザーを解任でもしようものなら逆に相場が荒れる展開になりかねない状況です。
今回はトランプを破産から救ったウィルバーロスも同席している話ですから、なんとかもめごとが収まることを期待したいところですが、就任から3年目を迎えていよいよトランプもうまく立ち回れなくなりつつあることが見え始めています。
米中米朝の会議でしくじれば2020年で政権お仕舞の可能性も
2020年の選挙のことを考えればこの時期にさっさと決着がつくよりはもう少し引っ張ってしっかりとした成果がでることのほうは支持率の向上にはつながりそうですが、北朝鮮との会談を控えて、中国との交渉は早く終わらせたいと考えている可能性もあるようで、トランプのイラつきの原因が何なのかについてはもう少し注意深く見ていく必要がありそうです。
ただ、足元の状況では就任当初のようにさっさと難題を切り抜けてきた印象は徐々に消え失せてきており、トランプの強引なやり方にもそろそろ限界が出始めているのかもしれません。
米中問題、そして米朝関係をどのように改善できるからは2020年のトランプの大統領選における再選にも大きな関係があるだけにここから事態をどう改善させていけるかに注目が集まるところです。
株式市場はとにかく交渉延長を好感していますが、市場が楽観視するような結果がでるかどうかはまだまだ分からないというのが実のところなのではないでしょうか。
ドル円もここからの政治的な動向にかなり左右されそうで逐次状況を把握することが重要になりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)