市場では1月FOMCが急激な宗旨替えで今年は殆ど利上げをしないのではないかとさえ言われるほど利上げの一時停止・後ずれが鮮明になってきています。
これを受けて米株は大きく値を戻しましたし、米債市場は10年債の金利が大きく下落するといったゴルディロックス相場の延長的雰囲気がかなり醸成されるようになってきています。
しかしこのFRBの利上げ後ずれの陰で大きな影響を受け始めているのがレバレッジドローン市場であり、このレバレッジドローンを細分化して債券として販売しているCLO市場もかなり様子がおかしくなりはじめているのです。
そもそもこのレバレッジドローンとは
レバレッジドローンは名称ぐらいは聴いたことがあっても中身はよく知らないという方がほとんどだろうと思います。これは複数の銀行が協調して1つの有志契約書をもとに同一条件でひとつの企業に提供する融資のことで、一般的にはシンジケートローンなどとも呼ばれているのです。
とくに与信レべルの低い企業向けのシンジケートローンのことをレバレッジドローンと呼んでおり、金利は高く設定されていますし多くのローンは変動金利制になっているものも多い状況です。
これを細分化した証券として販売しているのが「CLO・Collateralized Loan Obligation」と呼ばれるものなのです。
景気減速懸念からCLOの価格は大幅下落
FRBが債券金利を上昇させないとなれば債券市場全体にとっては悪い話ではないように思われるわけですが、これだけの景気状況でさえ、利上げを後ずれさせるというのは景気減速懸念の高まりとも読み取れるわけです。
これまでの低金利時代にはイールドハンティングから積極的にこの手の商品を購入してきた投資家が一斉に売りに回るようになっており、CLOの価格が大きく下落するリスクが高まりつつあるのです。
CLO市場はすでに日本円にして113兆円を上回る市場規模を形成しているだけにいきなりシュリンクしはじめれば、金融市場全体にそれなりの影響がでることが考えられます。
国内の邦銀が大量保有者というまずい状況
このCLOは国内ではあまり関係ないのではと思われがちですが、実のこの市場で格付けの高い商品のうちの3割以上を持っているのが邦銀であると言われており、このまま価格が下落すれば米債の価格が下落して投げがでた一昨年と同じように邦銀も一斉にCLOを投げに回る可能性がではじめているのです。
日本の銀行が購入しているのはトリプルAと呼ばれるもっとも高い格付け商品ではありますが、こんなものはサブプライムローンの証券化と同じで一旦ばらして組み替えてしまえば格付けなどはまったく信用できない商品ですから、邦銀が大きなダメージを受ける危険性はかなり高くなりつつあるといえます。
もともと外債投資が得意ではない邦銀ならではのイールドハンティングの大失敗ということもありそうで、為替の世界では年度末に向けてこうした損失の残りの資金が円転して日本に戻る可能性もあることから思わぬ実需の円高を示現する危険性が出始めているといえるのです。
米債市場ではCLOからとにかく一斉に資金が撤退しはじめており、CLO市場関係者は邦銀が買い支えてくれることを期待しているとも言われていますが、この手の商品は売りが嵩めば流動性パニックを引き起こしやすく過度に下落するリスクがかなり高まりますので、ここからのCLO市場の推移にも相当注意が必要になりそうです。
FRBの金融政策の巻き戻しと逆に一旦停止といった複雑な状況はジャンク債を中心とした債券市場に大きな影響を及ぼしはじめており、ここからは何が相場暴落のきっかけになるかよくわからなくなり始めています。
とにかく多くの市場から資金が撤退しはじめているのは事実のようですから、今年は相当注意深く取引することが求められそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)