ここのところ米国の株式市場は米中の通商協議の先行きに対する楽観的な報道がでるとすかさず値を上げる展開となっており、ドル円もその動きにシンクロして上昇することが多くなっています。
しかし逆に否定的な内容のヘッドラインがニュースに踊るとすぐに上昇分を剥落させるというかなり神経質な動きとなっていることもまた事実です。
ひとつにはテキストベースのニュースにCTAのアルゴリズムが執拗に反応してはオーバーシュート気味に買い上げる動きをすることがこうした結果を示現させているのではないかと思いますが、悪い情報がでればこれまた即座に反応するので結果的に相場が無闇に上下することになっているように見えてなりません。
今回の交渉から責任者はライトハイザーに一本化
1月末に開催される劉鶴副首相との閣僚級の貿易協議についてはこれまで交渉する政権の人間がころころ変わり、会議の度に登場人物が変化するといった中国にとってもやりにくい状況が続きました。
しかし、今回からはUSTRのライトハイザー代表が交渉の責任者となることから米中協議を巡ってはクドローやナヴァロ、ムニューシンの意見はあくまで参考意見状態で直接的な交渉には影響を及ぼしていない点にかなり注意が必要になってきているようです。
安易な楽観論が期待できないライトハイザーの交渉姿勢
トランプ自身は貿易赤字解消といった単純かつ短期的な問題解決を求めているようですが、ライトハイザーは中国の国家資本主義に基づくこれまでの不公正な貿易慣行の徹底的な是正を強く求めていく意向であることから中国にとってはかなり厳しい交渉となることは間違いなさそうです。
中国側としては構造的問題の改革をつきつけられないために輸入自主拡大など比較的短期的に貿易赤字の改善に寄与するような内容だけを示唆し続けていますが、表面的な解決策だけで米国サイドが納得しなかった場合には予想外の交渉決裂も十分に考えられる状況です。
3月1日から関税率がさらに引き上げられるといった最悪の事態もまだ回避されていない点だけはあらかじめ理解しておく必要がありそうです。
そもそもトランプの株価ファーストも怪しい状況
トランプ大統領は最近の言動からかなり「株価ファースト」の発想になり始めているようにも見えますが、こちらも本当にそうなのかどうかは疑わしい部分が多々あります。
確かに2019年は大統領選挙の前年ですから、様々な政策を駆使して株価が下がらないように、むしろ上昇するような政策発動をする大統領が多かったことからウォール街も2019年はこうしたアノマリーにかなり期待している部分があるようです。
恐らくトランプも上昇したほうがいいとは思っているはずですが、その一方で政府の一部機関閉鎖は終了する気配を見せていませんし、本当に株価を気にしているのかと思わせる行動も延々と継続中です。
とくにトランプが戦っているとされるディープステートの輩はウォール街からかなりの利益を得ているだけに、株価が大きく崩れれば彼らの既得権益的利益が剥落するため、相場の暴落があってもトランプはウォール街を見捨てるのではないかという見方も広がっております。
逆に株価の大幅下げでこうし既得権益層を根絶やしにする可能性すらあるわけですから、株価ファーストも嘘か本当かは俄かに判断できないのが実情です。
政府機関の閉鎖の影響で月末から開始とみられていた日米の通商協議は春先に後ずれし始めているようです。
一方、中国との会議は月末に確実に開催されることになりますので、ここでライトハイザーが厳しい要求をつきつけて交渉決裂が鮮明になれば株価もかなりの巻き戻しを示現するリスクはまだ高く、今の戻り局面が押し目の絶好のチャンスと判断するのはさすがに拙速すぎのようで、もう少し事態を冷静に見極める必要がありそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)