ここのところ米金融機関の決算が比較的良好といった報道が出ていることから米株でも金融株の上昇が期待されています。
しかし、どうも個別の金融機関の状況を見ていますとそれほど喜ぶべきものがあるわけではなく、逆に先行きの不透明感を醸成するようなニュースが結構市場を駆け巡っておりここで見立てを間違うと大きな損失になりかねない状況になりつつあることがわかります。
明かに様子が可笑しくなってきた欧米系銀行の投資部門
17日に発表されたモルガンスタンレーの決算は、主力の株式取引業務が横ばい、債券取引が30%減ったため、トレーディング部門が7%減収となっています。
株式引受業務の落ち込みで投資銀行部門も減収となっているのが実情ですが、税制改革で一時費用が減ったことが幸いして純利益だけは前年同期比2.3倍に増えてますが、トレーディングがまったくうまくいっていないことを示唆した内容となっています。
ブラックロックでは運用資金を減額するとともに世界で500人の人員削減を検討しており、数週間以内に実現する見込みとも伝わってきています。
欧州系銀行では自己売買部門閉鎖の動きも
また米系銀行ではありませんが、自己勘定取引部門を閉鎖する動きにでていいるのがフランス系銀行の「BNPパリバ」と「ソシエテ・ジェネラル」の二社で、この動きが他社に広がるかどうかが注目されはじめています。
「BNPパリバ」の場合25億ユーロ、3100億円強の規模をもつ自己資金を利用してリスクの高い取引を行うオペラ・トレーディング・キャピタル部門が昨年利益計上に苦戦したことから今年さっさと撤退することにしたようで、プロがやってもボラティリティの高過ぎる相場では儲からない状況がかなり明確になりはじめています。
同じフランスの銀行として有名な「ソシエテ・ジェネラル」も自己勘定で高リスクの取引を行うデカルト・トレーディング部門の閉鎖を検討中ということで、2017年の資産は41億ユーロ・日本円で5100億円規模になっており、ここ数年この部門の利益は100万ユーロにも満たない状況が続いているといいます。
本来儲かっているなら自己売買部門を閉鎖したり投資金額を減額したりということを銀行がするわけはないのですが、明らかにそうした動きを投資銀行部門が明確にし始めている点は非常に気になるところです。
なんとなくパリバショックを起草させる状況
BNPパリバというとサブプライムローン問題に詳しい方なら2007年8月にこのBNPパリバ傘下のファンドが突然凍結となりそのニュースを受けて為替市場がドル円は約10円、ユーロ円は約15円、ポンド円は約20円、それぞれ1週間で下落するという大混乱に陥ったことを思い出される方も多いことと思います。
ここからリーマンショックへの大暴落の道がスタートしたわけですから、長くこの市場に関わっている人間はまたパリバかと思う銀行名となっているのは事実です。
表面上決算のいい米系銀行でも少なからずトレーディング部門が爆発的な収益を出しているというところは限られており、多くの銀行の投資銀行部門がうまく利益を稼げない状況が続いている中で、今年起こるかもしれない大幅な株価下落に備えて自ら対象部門を縮減し始めているのではないかともとれる状況になっている点は相当注意すべきであるといえます。
日米ともにセルサイド(つまり証券会社のような売り込み部門)のアナリストたちは相場が下がると押し目として顧客に株の取引きを強力に進め、将来的にはまた株価が大きく上昇することをかなり強く訴求しています。
逆にバイサイドの人間は大きな下落が起きるかもしれないことを予見して投資額を減らしたり対応する人員を減らすなどのリスク管理に動きはじめており、この2つにはかなり大きなギャップが生まれているのが実情です。
いつ暴落が起きるのかは誰にもわかりませんが既にプロ集団ではその備えが始まっている気配濃厚で、我々個人投資家もこのあたりの気配をしっかり察知することが重要な時間帯にさしかかってきているようです。