FOMCで利上げが決定された直後にトランプ大統領がパウエル議長の解任について議論したという報道が出てから、週明け24日クリスマスイブで動かないはずの相場はオセアニアタイムから若干下押しして始まり、市場はそれなりに気にしているような状況となっています。
このFRB議長の解任に関してはたしかに物理的に実施する方法はあるものの、そう簡単に実現できるものではないことも判ってきています。
クリスマス休暇にかかってしまいその後の続報はでてこないまま年末に向かっていますが、本当にFRB議長をクビにできるものなのでしょうか。今回はそこにフォーカスしてみることにします。
司法の目もあり解任は簡単ではない
そもそも大統領が議論をしたとしても簡単にFRB議長を解任できるのかという問題ですが、米国・連邦準備法の10節2項に基づけば、大統領がFRB議長を含め理事を罷免するためにはそれ相応の正当な理由が必要で、この正当な理由は細かく法律上定義がされてはいません。
ただ、一般的には非効率的行為、職務怠慢、不正行為などがその該当理由で大統領とFRB議長との政策が不一致しているというだけでは正当な理由とはならず、無理やりクビにすれば司法がたちどころに介入してその決定を覆す可能性もあり、そう簡単な話ではありません。
そもそもイエレンからパウエルに首をすげかえたのは誰あろうトランプ自身ですから、意向に沿わないので2年でクビというのもかなりエキセントリックな話ではあります。
トルコのエルドアンを起想させる愚業となる可能性
中央銀行への過度な介入という話になると最近ではすぐに思い浮かぶのがトルコのエルドアン大統領ですが、こうした事態が顕在化してきますと、結局自国通貨がリスク回避から売れれる形になりドル円でいえば円高が大きく進行するリスクがつきまとうことになります。
また株式市場にも決してプラスには働かないはずで、トランプがFRBを制御して利上げを後ずれさせることにたとえ成功したとしても株価がもとに戻るかどうかはかなり怪しいものとなりそうです。
そもそもトランプはウォール街に決して良好な感情をもってはいませんから、中間選挙も終了した現時点では株価の下落というものは表面上は気にしているようなそぶりを見せていますが、ディープステートの資金源をぶっ潰すという意味ではある意味絶好の機会でもあり、無理してFRB議長のクビを挿げ替えてまで株価を守る意思が本当にあるのかどうかかなり疑わしい状況でもあります。
結局一部の有権者へのエクスキューズのためのジェスチャーか
恐らくFRB議長を簡単に辞めさせれないのはトランプ自身が一番よく理解しているはずで、結局のところ利上げによる株安で影響を受ける有権者に対してのいい訳とFRBへの責任転嫁を際立たせるためにこうした話をわざわざ出してきているのではないかと勘繰りたくなる状況です。
足元で闇雲に金利を下げるような動きをした場合、確実にインフレが進行してFRBが政策対応で市場を制御することは不可能になりますし、逆に金利を上げすぎればさらに株価が下落してリセッションを呼び起こすことになりかねないため、FRBの金利政策は相当難しいところに差し掛かっています。
そこにトランプによる横やりのノイズレベルが高まるわけですから、為替の取引は相当やりにくい状況に差し掛かっています。クリスマス休暇明けこの話題がどこまで継続してエスカレートするのか、逆に立ち消えになっていくのかを見守る必要がありそうです。
いずれにしても年内の取引可能な営業日は非常に限られていますので偏った思惑から迂闊にポジションをとることは避けたほうがよさそうです。
今年は本当に例年とは異なる動きをしており、市場の動きがどうなるのかを見極めませんと、無闇に証拠金ばかりを減らしてしまいそうな嫌な相場の雰囲気が漂いはじめています。
(この記事を書いた人:今市太郎)