米中首脳会談により関税税率が一旦引き上げ見送り90日間の交渉継続となったことから、特段何も新たに状況が改善したわけでもないのに、株価だけは大きく値を戻していますが、為替のほうは偉く慎重で特別大きな値動きにはつながっていません。
しかしそんな中で面白いネタが飛び込んできました。すでに正式決定と思われていた武田薬品のシャイアー買収が年末も押し詰まった5日に臨時株主総会を大阪で開催し、シャイアーも同日、株主総会を開催する予定であることがわかりました。
今更株主総会で信を問う
え?今ごろそんな話がでてくるのか?という気がしますが、シャイアー買収総額6兆8000億円のうち3兆円あまりは借入と社債発行で調達しているようで、残りの4兆円を新株発行によって賄うために株主総会ではこの4兆円の新株発行について株主の是非を問うことになるというのです。
この株主総会で正式に買収が承認された場合には、来年1月8日には買収が完了する可能性があるということですから、ここから少なからずドル買い需要が発生する可能性が出てきているといえます。
これまでM&A実需の話が延々でてきていましたが、すでにある程度調達している可能性もあり、どの程度年末のドル円需給に影響を及ぼすのかははっきりわかりませんが、4兆円の半分が市場に登場したとしてもかなりの額ですから、ここから年末までは思い切りドル円が上昇する可能性が出てきている状況となってきました。
反対で買収失敗ならこれまでの資金はどうなる?
ところで逆のケースになった場合にはこれまでドルで手当てしてきた資金は一体どうなるのでしょうか?
まあほとんど承認される可能性のほうが高いのでしょうから、あまり心配したものでもありませんが、借入金は返済するとしてもそれ以外でドル転したものがいきなり円転巻き戻しなどということになると武田案件だけでドル円相場はかなり下落してしまう可能性もあり、この臨時株主総会はかなり重要な決定内容になりそうな気配です。
なぜ今頃臨時株主総会なのかという疑問は当然あるわけですが、日本だけでなく米国、中国、EUなどから個別に承認を得るのに時間がかかったこともあるようで、それだけ大型の買収であることがあらためて認識される次第です。
買収関連トレード終了なら下落に転じるリスクも
またもう一つ気を付けなくてはならないのは、M&Aの買い切り玉がすべて終焉した段階では今度は上昇が途絶え、逆に絶好のドル円の売り場になる可能性があるということです。
ドルの実質実効レートでは過去30年レベルでも最も高いところで推移していますから、このまま何事もなくドル円がそのまま上昇するとは考えにくく、実需が途絶えればその価格にも変化が現れることだけは意識しておく必要があります。
とにかく今年ドル円は年間で10円にも満たない狭いレンジの取引に終始し、その割には損を出した個人投資家も結構多かったことと思われます。
年末ぐらい需給関係からドル円が上昇してもバチは当たらないと思いますので、なんとか武田の買収が承認されて年末ドル買い特需が発生することを祈りたいところですが、投資家としてはとにかく安値で買い持ちして待ち構えているぐらいしか準備の方法はありませんので、ここ一両日中はこの件に集中していきたいところです。
果たして実施となった場合にドル円はどのあたりまで上昇するのでしょうか?時間との闘いもありますから需給次第では115円に到達することもない話ではなくなってきているようです。
(この記事を書いた人:今市太郎)