ここのところ強気を保っていたパウエルFRB議長ですが、トランプ大統領からかなり罵られたのが効いたのか、NYで開かれたエコノミック・クラブ・オブ・ニューヨークで講演し、前言を撤回するような発言をしています。
FF金利の誘導目標は「米経済成長を加速も減速もしない、経済にとって中立となる水準の幅広い推定レンジをわずかに下回っている」と言い出したことから株価はこれを好感し、S&P500種株価指数は2.3%上昇で終了しました。
終値としては2週間ぶりに最高となり、ダウ工業株30種平均も600ドル強上昇する展開でようやく感謝祭ラリーの様相を呈してきています。
パウエル発言だけでこれだけ株価が戻すというのもいささかやり過ぎではありますが、トランプに忖度してわざわざこうした発言をした可能性は結構高そうで、そのぐらい株式市場は材料を求めていたということなのかもしれません。
しかしこうなるとドル高はかなり抑え込まれることになりそうで、年末までの相場としては実需が絡む需給から上昇するかどうかがポイントになってきそうで、それが終わると反転下落に転じる可能性が高くなりそうです。
利上げ急ぐも地獄、緩めるも地獄のFRB
たしかに過去100年間近くFRBが過度に利上げを行った直後に相場が暴落することが殆どで、政策判断を間違うことがほとんどであったことは否めません。
完全雇用下で株価が低迷しはじめたといってもNYダウが2万5000ドル台にある足もとの状況で一定の利上げをしなければ、もはやいつまで経っても利上げのタイミングはやってこないことになり、次のリセッションはまたしても緩和措置に逆戻りせざるを得ない点は非常に大きな問題として残りそうです。
またここで利上げをストップさせた場合、ドル安からインフレを助長しかねない状況でとりあえずゴルディロックス相場は延命しますが来年以降そのしっぺ返しがかなり大きなものになって返ってくることも覚悟せざるを得ない状況です。
上げすぎれば相場の暴落を招くリスクに直面し、上げ渋れば余分な負荷を相場に残すというかなり難しいかじ取りを行う必要に迫られることになりそうです。
バブル相場は最後が大きく走るといいますから、ここからまた株価が反転上昇する機運を作り出すことになるのかも知れませんが、こうなると来年以降さらに相場の下落に注意を払う必要がでてくることになりそうです。
年末は米系企業のレパトリエーションなどから、一時的にドル円も上昇しそうですが、一方で114円台はかなりその上昇を阻む動きも顕在化してきそうで、どこかで戻り売りを考える必要がありそうです。
このコラムでも書きましたが、週末はまだ米中首脳会談が控えており、市場が楽観視するほどいい話がでてくるかどうかは全く分かりませんし、英国のBREXITの問題でも相場が荒れそうですから、とにかく短いタームで売買をしてあまりポジションを引っ張らないライトな取引を心掛ける必要がありそうです。
ひとつずつ材料をクリアしていくと結果的に相場の方向性が見えてくることになりそうで、それまではよくわからないと思ったら無理せず休み休み売買することも必要になりそうです。
季節的には上昇だけ期待していればいいはずのドル円ですが、ことのほか今年の相場は難しいところに来ているともいえ、とにかく慎重に対応することを一番に心掛けたいところです。
ちなみに30日にはロンドンフィックスにも強いドル買いや逆に円買いなど実需のオーダーが出る可能性がありますので、一時的に相場の流れが急に変わることもあり得ますので通常以上に注意をすることが求められます。
(この記事を書いた人:今市太郎)