10月株式相場の想像以上の下落で、日米どちらかの株の売買をされていたトレーダーはそれなりの損失を被ったのではないかと推測されますが、皆さんはいかがでしたでしょうか?
この暴落相場、AIを実装したコンピュータ取引が下落にかなり加担したのではないかといった憶測もかなり飛び交いました。実際リスクパリティファンドなどは分散投資の中で価格が下落した株式を自動的に損切する動きに出たことから、相場の下落がかなり加速するのに役立ってしまったということは実際に起きているようです。
しかし、こうした事務的な損切りの動きではほとんどのファンドが儲かっておらず単に分散投資をしていればリスクを回避できる時代はすでに終焉を迎えている可能性が高くなっています。
実はこうした戦略とは別にAIを駆使して市場のセンチメントを掌握し、それを売りにつなげて利益を出したファンドが結構存在することがわかってきています。
データマイニングで市場のセンチメントを把握する動き
我々個人投資家はトレンドラインを引くことで市場のセンチメントを計るという動きをしています。
しかし、最近のファンドはAIにより非構造化ソーシャルデータとテキストマイニングという典型的なビッグデータ分析を行うことで市場のセンチメントを見つけ出して、売買に応用するという動きがすでに顕在化してきており、10月のような暴落にも巻き込まれないファンドが実在していることがあらためて確認されはじめています。
こうしたファンドは市場のセンチメントを分析するのにツイッターなどのSNSのテキストを克明に分析しているようで、日本国内ならばLINEのデータなども役立つようになっているようです。
こうしたAI利用でセンチメント分析を行うファンドでは、ニュースやネット上の噂といったものが相場の価格にどのような影響を与えるのかを予測することが可能になってきており、その価格がどのようなタイミングでトレンドを形成するのか、またどの段階で方向が変わって動き出すのか、反転するのかなどを予測できるようになっているといいます。
たとえば10月の相場では米株の暴落が止まってもしばらく日経平均が売り込まれるといった状況が続きましたが、こうした売りの動きは、もしかするとこの手の分析を行うファンドが売りに加担したことによるものなのかもしれません。
我々はこうした相場の反転状況をあくまでテクニカルチャートで見つけ出す努力を延々としてきたわけですが、既存のテクニカルでは所詮先のことはわからないのが実情となってきました。
しかしこうした市場参加者のセンチメント変化が相場を大きく反転させるとなると、もはやチャートを追いかけているだけではそのタイミングをつかむことはできない状況にあるわけです。
個人投資家に対処法はあるのか
我々個人投資家の場合さすがにAI利用のビッグデータ分析をすることはできませんが、市場のセンチメントについては「みんかぶ」のようなサイトで、個人投資家の売買意向に対する書き込みなどから多少なりとも判断することはできるかもしれません。
またFXでは業者が開示しているポジションの傾きからそれを判断することができる可能性も残されています。株式市場の場合には総売りという事態も当然あるわけですが、為替の場合はそれとは多少ことなり市場参加者すべてが売りに回るとそれ以上下がらないという状況に陥ることは十分にあります。
下落相場でもショートカバーがでればそれなりに買いで利益をあげることができるといった特別な売買方法も十分に考えらますので、単純にテクニカルチャートだけに依存するのではなくこのセンチメントを強く意識して売買戦略を立てていくこともこれからは必要になるのではないでしょうか。
とくに足元のように方向感がはっきりしないときには、こうした視点で相場とその周辺のSNSの意見の変化などを参考にしてみることも有益になりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)