読み込み中...昨日、日産の会長であるカルロスゴーンが金商法違反の疑いで逮捕されるという衝撃的なニュースが飛び込んできました。
収入の詐称ということであれば通常所得税法違反で捕らえられるわけですが、金商法となれば有価証券に記載した賞与額が虚偽のものであったということで、会社ぐるみでやっていたのではないかという疑惑がまず浮かんだ次第です。
過去5年間で50億という金額になれば経営者といえども勝手にやらかして見つからないような額ではなく、よく考えれば公然の秘密だったのではないかという気もしてくる内容ですが、この部分はまだ現在進行形の話ですから続報を待ちたいところです。
それよりもむしろ今後の事が気になるのは日産、そして三菱自動車の先行きの問題です。ルノーはルノー公団と呼ばれたフランスの国営企業からスタートしたもので、いまだに大株主はフランス政府というきわめて特殊な企業といえます。
90年代後半にいよいよ日産が2兆円を超える有利子負債に耐えかねてルノーとの提携を発表を行ったときには国内では殆ど使われなかった言い回しですが、実は株の4割以上を取得しており、この時点からルノーの子会社になっていたわけで、決して対等の独立した関係ではないのが大きな問題となります。
フランス政府はルノーと日産の合併を希望
以前から出ていた話として有名なのがフランス政府がルノーと日産の合併を希望しているということでややもすれば日産車の生産をフランスで行いたいという強い意欲を持っているものでした。
確かにユーロ圏ではイギリスに大きな工場を持つ日産ですが、これを引き込めば安定的なフランスでの雇用も確保できるわけですし経済成長にも寄与するわけですから、フランス政府がそう希望するのも判らない話ではありません。
こうした合併話をブロックしてきたのがゴーンであり、その本人が今回の不祥事で消滅したことにより、今後ルノーと日産、さらにおまけのようについて回っている三菱自動車の関係がどうなるのかが非常に注目されることになりそうです。
日本国内では自動車メーカーが忽然と姿を消すということは過去60年余りでもプリンス自動車が日産に吸収合併された以外は目立つものはありませんでしたが、提携はかなり進んでおり、ダイハツもスバルもスズキもトヨタ系ですし、独立した自動車メーカーというものはほとんど存在していない状況にあります。
ただ、提携によりブランドが消滅することはなかったためそれぞれのメーカーがそのまま残る形となっています。
しかし英国を見ますとジャガーとランドローバーはインドのタタが株式を取得しており、英国での生産が続いていますが、ミニはBMWのブランドとなって英国企業ではありませんし、吉利自動車に買収されたローバーブランドはすでに英国からは姿を消しており自国の自動車メーカーはあっという間に消えてなくなっています。
日産とルノーが合併した場合ブランドがどうなるのかが大きな問題になりますし、生産拠点の統合や変更がおきれば国内での生産が大きく減少して名実ともに自動車メーカーが一社消滅しかねない状況で、今後この合併劇がどのうように進むのかも気になるところです。
また三菱という国内財閥の名を持つ三菱自動車はそもそも三菱重工の自動車部と三菱商事の販売部門により設立された会社で、日産の傘下に入った段階ですでに厄介払いされた感もありますが、こちらも統合という話になったときに買い戻されるのかそもまま見捨てられるのかが大きな注目点になります。
この二社が国内メーカーとして消えれば対米貿易交渉にも変化
ところでこの話で為替相場ともっとも関係があるのが日米の貿易交渉の問題です。いまのところ日産も三菱も日本のメーカーとして輸出額がカウントされていますが、これが忽然と消滅した場合にははからずも対米貿易赤字が大きく減少することになり今後の状況次第ではこのあたりにもかなりの影響がでることが考えられます。
なにより労働単価も高く、しかも高齢化と人口減少が進むこの国であえてクルマの生産をする必要なしといった判断が下った場合には日本からこの二社の生産拠点た大きく減らされることも考えられ、この統合合併劇は意外に大きな影響を及ぼすことになりそうです。
これまでゴーンの存在があったからこそあまり深刻な問題となってこなかった合併の件ですが、ここからはかなりシリアスなものになるリスクがあり、逆に合併がうまくいかなければ日産と三菱は統合化の進む業界のなかで漂流しかねない状況にあるともいえるのです。
（この記事を書いた人：今市太郎）
