15日のロンドンタイムに入ってからまたポンドが激しく動いています。
14日にEUとの離脱協定の素案の閣議了承をとりつけたということから大きく買い戻されたポンドでしたが、一転して閣僚が4人も辞任することとなり、とくにEUとの交渉にあたるラーブ担当相まで辞任を発表したことから、ポンドは対円で3円以上も暴落する動きとなっており、クロス円にも影響が出始めています。
この英国のBREXIT問題、詳細を語りだすとこのブログの中には納まりきれない内容であることから、まず肝になっている部分と今後どこにリスクが発生するのかについてだけ最低限理解をしていただきたいと思います。
メイ首相が持ち帰ったEUとの離脱合意案はほぼEUのいいなり
まず、EUとメイ首相が交渉して持ち帰った離脱合意案というのは、ひとことで言えばEUのいいなりの案で英国にとっては何の意味もない内容である点が今回大きな問題となっています。
離脱によって得られるはずのメリットというものが悉くはずされ、EUの言う通りに離脱の話を進めることになり、一時的に貿易協定に残ることになるため、金は要求される、融通は一切聞かない、という点を多くの保守党の閣僚が激怒しておりラーブ担当相が辞任したのもこれが原因となっているようです。
内閣でも支持が得られない中で保守党内ではさらに逆風が吹き荒れる状況ですから、この内容がすんなり議会を通過するとは思えない状況で、まずメイ首相が保守党の党首を辞任せざるを得ない状況が考えられるようです。
メルケルと同様で党首を辞任して首相が継続できるのか?という素朴な疑問もわいてきますが、結局議会を通過できなければ決してうれしくないEU主導の合意案は破棄されることとなり、残るは着の身着のままの合意なきBREXITのみということになってしまいそうです。
したがって、ここからこの承認プロセスが進行する段階でまたリスクが高まり、メイ首相本人は「辞任はない」と言っていますが、引きずり降ろされるリスクは残り、このEUとの合意案が否決されてもまたポンドが売られる引き金になりそうです。
極めつけは合意なき離脱を突然表明するケース
ポンド起因の相場の暴落が起きるであろう最悪のケースはやはり「合意なき離脱」であり、しかも来年3月を待たずにいきなり英国が離脱を表明した場合、対ドルでも対円でも10パーセントから15パーセント程度すぐにポンドが売り込まれることになるのはどうやら間違いなさそうです。
この場合クロス円もかなりの影響をうけますから、ドル円は2016年のBREXIT投票確定時のようにいきなり10円程度は売り込まれるリスクを覚悟しておく必要がありそうで、こと為替に関しては相当な惨事が引き起こされる危険性が高まっています。
楽観論は結局ほとんどワークしなかった
これまでBREXIT交渉を巡っては妙な楽観論がメディアに飛び出すごとにポンドが買い戻されましたが、ここからはプラスに働く要素はほとんどなさそうでいつ大きく下げるのかが大きな問題になりそうです。
ただし、為替の場合には市場参加者のすべてが売りに回れば下がらなくなりますから、いきなり市場の意に反して大きく相場が戻すこともありうるわけで、結構難しい時間帯に突入することになりそうです。
しかもポンド下落の影響はドル円などにも大きなインパクトとなりますから、一体いつこうした最悪の決定がなされるか次第でここからの相場は想定外の変化に見舞われることになりそうな状況です。
年末から年始にかけては米中の貿易協議の行方とともに英国のEU離脱の在り方が相当相場に影響を与えそうで、日頃にもまして注意が必要になりそうです。
とくに2年前にもましてアルゴリズムがテキストの報道内容に過敏に反応して相場が大きく下落したり買い戻されたりしていますので、しっかり損切りを入れておくことは必須で、十分に用心されることをお勧めします。
(この記事を書いた人:今市太郎)