欧州委員会は、11月13日、つまり本日までにイタリアが修正した予算を提出することを要求しています。トリア財務相は、同国の2019年予算案を巡り欧州委員会の理解を得る土壇場の試みとして、経済成長率目標の引き下げを検討する姿勢を見せながらも争点の財政赤字目標は堅持する構えです。
これがどうなるか次第でユーロをはじめとするクロス円が大きく円高に振れる可能性もでてきていることから、ある程度の結果が見えるまではかなり慎重に対応したほうがよさそうな状況となってきています。
欧州委員会はイタリアの2.4%の赤字目標について、行き過ぎた財政拡大だとしていますが、実際の赤字は2.9%に拡大し、3%の上限に達する可能性もあるとしており、かなりイタリア政府の対応に懐疑的です。どうもこのあたりのイタリアとEU委員会のセンチメントがもう一つよくわからないだけに、断定でポジションを持つのは相当危険であり、結果を見てからの対応でも利益機会はありそうです。
※ユーロドル4時間足
ユーロドルは12日の夕刻段階ですでに1.13のラインを大きく割り込んでおり、逆指値もつけて1.12台中盤まで押し込まれる動きとなっています。
状況次第ではさらに下がることも考えられますし、なんらかの好転があればいきなり買い戻されることになりますから、ドル円についてもユーロ円の動きに左右される可能性が強く、明日どうなるかを見てからしっかり対応するのが一番安全そうです。
訳のわからなさは英国も同様
ところで訳がわからないという点ではさらに不可解な状況になっているのが英国で、11日付のサンデータイムスがBREXITをめぐり残留派の英閣僚4人が間もなく辞任すると報じたことから、ポンドが週明けから売られる展開になっています。
※ポンド円4時間足
このBREXITの問題はメイ首相とEUとのやり取りがうまくいかないのもさることながら、英国の政権内で不協和音が常に現れることになるため、前に進んでいるのか内部崩壊が進んでいるのか正直なところさっぱりわかりません。
このままでいくと着の身着のままの何の条件もない単なる離脱になるリスクが結果的にかなり高くなっている状況です。
ただ、EUサイドも来年となると主要なメンバーが次々交代することになりますし、ドイツのメルケル首相はすてにレイムダック化していますから、時間を引き延ばすよりある程度妥協してさっさと退場してもらうほうに舵を切る可能性もあり、どういう形に落ち着くかの落としどころはまだよくわからない状態です。
まさにニュースのヘッドライン次第で上げたり下げたりの繰り返しで、スキャルピングなどでうまく取れるなら話は別ですが、普通にエントリーすれば必ず投げと踏みの応酬にひっかかってそれなりの資金を失うことになりかねません。
米国サイドの大きなイベントがかなり消化されたことから、年末は意外に堅調な相場が戻ってくるのではないかと想定していましたが、欧州圏のこの二つの問題にめどが立たないといきなり足元をすくわれかねないだけに、ここからは油断せずにトレードしていくことが必要になりそうです。
ファンド勢も今年は全く儲かっていませんから、こうした混乱を利用した短期的な売買がでれば想定外の動きが示現することは十分にありそうで、既に足元のユーロドルはその領域に入りつつあります。
どの時点までにある程度混乱回復の目途がつくのかもいまひとつよくわからなくなってきていますが、年末一杯は結構変動の激しい時間帯を過ごすリスクがあることだけはしっかり理解しておくべきでしょう。また土日を挟んだポジションの保有もかなりリスキーになってきていますから利益がでているならその都度リカクすることが肝要です。
(この記事を書いた人:今市太郎)