9日日本時間の午前4時に発表となったFOMCの政策決定内容は市場の予想通り政策金利はそのまま据え置きとなりました。
ただ、委員会はさらなる緩やかなFF金利の目標誘導レンジの引き上げが、経済活動の持続的な拡大、力強い労働市場の状況、中期的に委員会の対称的な目標である2%に近いインフレ率と整合すると予想という内容で、漸進的な利上げを示唆していることからドル円は114円に接近する動きとなっており、東京タイムでさらに上進していくことができるのかどうかが注目されます。
この声明を受けて米国10年債利回りは3.2%台を上昇しはじめていますが、プラスで推移していた米株はマイナスに転落する場面もあり、金利の上昇に米株市場はことのほか敏感な反応を見せています。
利上げを遅らせられないFRB
10月の雇用統計の平均時給も大幅に伸びましたし、ねじれ議会となった米国の上下両院は今後トランプのインフレ助長につながる政策に加え、さらにインフラ整備という大きな資金を必要とする政策に踏み込んでいくことから、放置しておいてもインフレが確実に進行することは間違いなく、いくらトランプから罵倒されてもパウエル議長は簡単に利上げを後ずれさせられない状況になりつつあります。
とはいうもののここから漸進的とばかりに利上げを加速させた場合には、株式市場がついてこれなくなることは間違いなく、利上げ後ずれならインフレ助長、加速なら株価暴落の引き金を引きかねない非常に微妙な状況に入ってきていることがわかります。
債務拡大、金利上昇、ドル安が危険なサイン
新債券の帝王、ダブルラインキャピタルの「ジェフリーガンドラック」は年初より米国の債務が拡大し、金利が上昇したところにドル安が揃えば、1987年のブラックマンデー再来の条件がそろうと警告を発しています。
すでに債務拡大と利上げは揃ってきているわけですから、どういう形にせよドル安が無闇に進行することはかなり相場のリスクが伴うことになりそうです。
つまり金利上昇で株価がこらえられなくなり、下落にドル円がついていくことになった場合にはかなりリスクが高まることになりそうで、結局のところこうした事態はFRBが利上げを急ぐことで引き起こされる危険性があるということになります。
今年さらに相場の暴落が起きるとは思えませんが、FRBの利上げペース次第でそう遠くない将来にとんでもないことが起きるリスクはずっとひきずることになることはほぼ間違いなさそうです。
米株はまたしてもミレニアル世代が年末に向けて買上げか
10月に前半の利益を一旦殆ど失ったウォール街のミレニアル世代はある程度ヘッジで売りによる利益も得ているのだろうと思いますが、さらに目標の利益をなんとか年末までに確保するためFAANG株を中心にして下げたところを買い向かう動きを見せ始めています。
ただ、その動きに呼応するように果たして本当に株価が年末に向けて順当に上昇するのかどうかはまだ今のところ不明な状況で、昨日までの上昇は売りをしかけたヘッジファンドの買戻しに過ぎない可能性もあることから先行きは微妙です。
いずれにしても11月後半には感謝祭が迫っていますしクリスマスまでもあっという間ですから果たして利益を復活させたいファンド勢の思惑どおりに相場が動くのかどうかに大きな注目が集まります。
しかし、まだ二番底がいきなり襲ってくるリスクも解消されたわけではありませんから、あまり安易に相場の上昇についていくのもかなり危ない状況で、為替でロングなら高値に乗らずにしっかり引き付けてから買いを入れていくといった工夫が重要になりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)