例年秋相場、とりわけ10月相場には魔物が登場するとよく言われます。20世紀に入ってからだけを考えても確かにろくなことが起きていないのがこの10月相場であり、ざっと見ただけでも次のようなことがいきなり想定外に起きて市場を混乱に陥れています。
・1929年10月24日 世界大恐慌~暗黒の木曜日発生
・1973年10月6日 第四次中東戦争勃発~オイルショック
・1987年10月19日 ブラックマンデー~暗黒の月曜日
・1998年10月 ロシア危機からLTCM破綻
・2008年10月24日 リーマンショック後のC波クラッシュ
・2009年10月31日 南アランド円大暴落
すでに87年のブラックマンデーからは31年も経過していますから、10月の暴落を思い出せる市場参加者は少なくなっており、特に足元のミレニアル世代は2008年の暴落すら経験がないという状況で、過去のケースに興味を持たない人が非常に増えていることは事実です。
しかしこの10月に暴落が起きるというのは、人が絡む以上まったく偶然の積み重ねであるとは敬虔に言えない部分もあり、市場自体が何かを我々に示唆している可能性も考えられるのです。
AI実装のアルゴリズム主体の売買で暴落は起きやすい
先ごろBIS・国際決済銀行が発表したレポートによりますと現状のFX取引の実に70%は人、つまりインターバンクディーラーを経由しないEBSやECNなどの電子取引で行われており、この流れにAI実装のアルゴリズムも組み込まれているというかなり衝撃的な内容が開示されています。
これまでは為替の取引といえばインターバンクのディーラーがすべての情報を掌握する状況が続いていましたが、もはや電子取引が中心ということになるとインターバンクに在籍していても相場の情報をつぶさに掌握することはできていないことが容易に予想さる状況です。
どおりでインターバンク出身を売り物にして、言っていることがほとんど当たらない、人によってはインターバンク出身といってもオワコン状態のアナリストすら存在するのが足元の状況です。
つまりネットの普及とほぼプロ並みの速さで売買できるシステムの普及で、プロとアマチュアの境界線がなくなりつつあり、プロの経験者にほとんどアドバンティジがなくなりつつあることが鮮明になってきています。
そんな中でトレンドが出ればその流れに躊躇なくついていくCTAなどのアルゴリズムの動きは、オーバーシュート気味に相場を動かしていく破壊力があり、先週あたりの日本の日経平均の動きの加速や、ドル円の113円を付けてからの猛進はこうしたアルゴリズムの過度なトレンドフォローによるとことが大きいとされています。
しかし上昇はまだしも下落、しかも暴落につながるような売りの加速の場合、人間では到底対応できないいわゆる「フラッシュクラッシュ」を招くことが多く、2015年8月の中国人民元に起因した米国株式相場スタート直前のフラッシュクラッシュはものの見事に何もできないまま相場の暴落と買い戻しを眺める状況となってしまいました。
実は今年2月の米国の株式市場の下落もほとんどフラッシュクラッシュによる、一瞬で相場が暴落する光景はもはやレアなものではなくなりつつあります。
今年の10月相場に何かが起きるということを示唆しているわけではありませんが、相場の暴落というものはちょっとしたことがきっかけでも、それをアルゴリズム売買がいきなり増幅させてしまうと、想像を絶する大災害へと発展します。
そのリスクは2008年のリーマンショックのときよりも、はるかに大きなものになっていることだけはしっかり認識してポジションをとる必要がありそうです。今年の10月もとにかく何事もなく過ぎ去ってくれることをひとえに願いたい気分ですが、果たしてどういうことになりますでしょうか・・・
(この記事を書いた人:今市太郎)