足元の相場ではトランプの対中国関税発言やその後の制裁24日に正式実施などをうけてもドル円は「111.500円」以下には一切下落しない、かなり強固な下値を保ちつつあります。
自民党総裁選を睨んだ「忖度買い」などとも思ったりするわけですが、どうもここへきて顕著な実需のドル買い円売りがでているようで、これが下値を支えている可能性が高くなっています。
ルネサスのM&A
ルネサスが米半導体を7000億円で買収というニュースがすでにメディアを駆け巡っていますが、この件の為替手当はどうやら始まっているようです。
ただルネサスはほとんどを金融機関からの借り入れで賄おうとしていますから、円建ての借金なのか借入段階でドル建てかによってもドル転の資金が市場に出回るボリュームが異なると思われます。
またすでにかなりの部分のドル転が終ってしまったとするならば、これを支えにドル円を購入するのはかなりリスクが高くなるといえます。
アルタバのヤフージャパン株売り
もう一つ市場で話題なのが米投資会社の「アルタバ」が資金調達のために、ヤフージャパンの株を全保有額売却するということで、ほぼ5000億円程度の資金のドル転需要が出てくる可能性があるという話です。
ただ、こちらも円で手に入れた資金を円キャリーでそのまま投資に使う話もまったくないわけではありませんから、勝手にドル転を期待してここからはドル高円安と決め込むわけにはいかず、そういう可能性もありそうだ程度に考えておくことが重要になりそうです。
とはいえ、下値で妙に堅い買いがいることは事実のようで、それがここでご紹介した2件関連なのか別なのかは判らないものの、金融機関からのサラウンディングがあるのだとすれば、こうした実需が買っているのはあながち嘘ではないのかも知れない状況といえます。
ただし、この手の実需玉が本当に下値を堅くしている場合、買いが終了すればすっかり支えがなくなることとなりますから、あまり信用しすぎるのも失敗のもとになる点はしっかり認識しておくべきでしょう。
9月にあるはずの米株の調整もほとんど起こらない
9月というのは年間を通じても米株がもっとも弱含む季節ですし、本来中間選挙年のこの時間帯は決して株価が強くはないのですが、今年に関するかぎりほとんど調整らしい調整もないままに10月に突入してしまいそうな状況で、こちらもドル円の下押しを起こさない材料になってしまっているようです。
日米の貿易問題などを考えればドル円がここから上昇してトランプがうれしいわけがないはずですが、政治的な横やりがでるかどうかもよくわからないものがありますから、このままドル円が一定の上昇に転じることも一応シナリオのひとつに考えておきたいところです。
実需といえば本邦企業のレパトリ需要にも注意
実需といえば9月は日本の半期決算時期ですから、海外の本邦系企業からの円転レパトリの需要もそれなりに登場する時期がやってきます。
こちらは月末ぎりぎりよりはそろそろ今頃のタイミングから「London Fix」などにドル売り円買いがでることが多くなりますが、価格にも一応気を使っているとはいえ、決算にからみますので事務的な売りがでることも多く、それなりに円高にシフトするリスクに注意が必要です。
足元ではドル円は本当に大きく動かなくなってしまっており、売買で利益を確保するのが至難の業になりつつありますが、大きく動かなければ損失に直面することもないのでとれるところを地道にとっていくというやり方で切り抜けるしか方法はなさそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)