8月後半からそれほど大きな動きを示現しなくなっていたトルコリラですが、ここへ来て、またしても今週13日(木)に発表されるトルコ中銀の政策決定の内容が相場の方向性を示すものとして大きく注目され始めています。
トルコ中銀は自ら近い時期に利上げを示唆したことから、本当に市場の期待通りの利上げが実現できるのかどうかに大きな注目が集まり始めています。
これまでエルドアン大統領の強い意向もあって、簡単には利上げができなかったトルコ中銀ですが、物価安定の下支えに必要な措置を講ずると自ら宣言したことから「応分の利上げ」があるのかどうかが異常に注目される状況となってしまっているのです。
物価上昇に対応すれば5.75ポイントの利上げが必要
市場のアナリストの分析では、足元のトルコの物価上昇に合わせて利上げを行う場合最低でも「5.75ポイント」の引き上げが必要であり、政策金利を「23.5%」以上に上げられるのかどうかに注目が集まります。
結局利上げを実施しても、これに及ばない内容となった場合にはトルコリラは激しく売られることになり、対ドルでは8ドル超も視野に入る状況となってきています。
本邦個人投資家にとってはトルコリラ円の行方が気になるところですが、一旦17円台にあるトルコリラ円には、まだ相当個人投資家が低レバレッジでロングポジションを抱えていることから、ここからの下落では強制ロスカットが再度執行されるリスクも伴っており、対ドル以上に対円でのトルコリラの下落の動きが危惧されるところです。
8月のトルコリラ円の相場の動きを見ていますと、2円程度は実に簡単に下落しますから、14円以下、10円に接近するといった最悪の事態も十分に考えられる状況です。
そもそもここまで金利が上昇し、年末までに召喚なりロールオーバーで対応しなくてはならない債券が、日本円で20兆円以上存在すると言われるトルコが本当にデフォルトにならないのかという潜在的脅威は常に付きまとう状況です。
米国人牧師が解放されないことから、トランプのさらなる制裁が飛び出せば予想以上にトルコリラが下落する危険性もまだまだ残されているところにいるといえます。
トルコリラ円の下落はクロス円下落からドル円も円高に
これまでトルコリラ円の動きなどというものはドル円にはほとんど影響を与えたことがなかったわけです。
しかし、注目通貨になってからはトルコリラが売られると全体的にクロス円が円高にシフトすることになるため、リスクオフの時にはドル高、円高となるためあまり動かないはずのドル円も確実に円高方向に動くことになることには相当注意が必要になりそうです。
また新興国の株式市場はトルコショック以来非常に弱い動きが続いているだけに、新興国全般に弱気相場入りとなった場合には、他の新興国通貨にもより大きな影響がでることが懸念されます。
アルゼンチンペソは必ずしもトルコの影響だけを受けているわけではないようですが、足元ではロシアルーブルも過去2年の中ではもっとも安値をつけており、1997年のアジア通貨危機を知る投資家にとっては非常に嫌な雰囲気が醸成し始めていることは事実のようです。
新興国通貨危機から相場がいきなり暴落するとは思えませんが、ネガティブな影響だけは確実に波及することになるため、ドル円の取引をされる方でも相当注意深く市場の状況を把握することが重要になりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)