足元の為替市場を動かしているのはどうやら「米株の動向」であることが8月後半からの市場の動きでかなりはっきりし始めています。
米債金利にもっと反応すべきものと考えていたのですが、どうも今の相場は株式市場、とりわけ米国の株式の動きに応じて動くようになっており、想像以上にやりにくさを感じます。
米株上昇ならリスクオン、下落ならリスクオフ
8月の米国株式市場は本来の「アノマリー」である下落方向にほとんど動くことがなく、陽線引けで終えているわけですが、9月は例年の動きからしますと8月よりも下落する確率が高いだけにこのまま「じり高」を続けていくのかどうかが非常に注目されるところです。
ただ、一時のようにハイテク株、特にFAANGならなんでも上昇するといった相場状況ではなくなっており、個別株ベースでみますとそれなりのまだら模様の展開が見え始めています。
ただ、ここ10年近く暴落に見舞われていないことから、米系のファンドマネージャーはとにかく年末のボーナス取得のためにハイテク偏重で大きく利益を獲得することを一切諦めていないようです。
よほどのネガティブな要素が出てこない限り、主要けん引株は大きく上昇し、結果的に指数平均も少なくとも11月の米国中間選挙まで継続してしまいそうな雰囲気になりつつあります。
最近の傾向としては米株が上昇すると、リスクオンからドルと円が売られることから、ドル円には大きな動きがでないのが特徴で、逆に株式相場が下落するとドル買い、円買いが進むので結果的にドル円はまた動かないという非常にやる気の出ない相場状況が延々と継続中です。
果たして9月相場でこの状況に大きな変化が現れることになるのかどうかが注目されます。
米債市場のショート派とロング派の仁義なき戦いにも注目
Data CME
シカゴIMMの8月末時点のレポートによりますと、7月から8月にかけて大きく売りが膨らんだ投機筋の米10年債ポジションでしたが、さすがに直近で米国への新興国からの資金回帰が加速しています。
まずは債券市場に資金が雪崩れ込んできていることから、ショートを保持していた向きが若干買い戻す動きを見せ始めているようで、ネットの保有残高は13万枚ほど減少し始めています。
これが相場の循環の中で少しずつ解消されているうちは、あまり問題はありませんが一気に売りの投げが出るような状況になると、ドル売りは鮮明になりそうで、ショート派が完全に負けということになれば為替に与える影響は相当大きなものになりそうです。
秋相場の市場の構造はすでに出来上がりつつある状況
貿易摩擦でのトランプによる中国叩き、牧師解放を巡ってのトルコ叩きは確実に新興国からの資金の撤退を呼び、12月まで残り二回利上げが強く予想されているFRBの政策の下では、益々米国市場に資金が集まりそうな状況が強まっています。
まずは債券市場に入り込んだ回帰資金は徐々に米株市場へとシフトする形になりますので、債券金利は低下傾向を続け株価は、じり高を続けるというシナリオが少なくとも11月後半の中間選挙まで続きそうな気配です。
また9月にはいよいよ日米の新通商交渉FFRが再開されますので、ドル円がここから自律的に大きく上昇することができるかどうかはかなり微妙です。
これまでは「8月末買い」「12月売り」という売買手法はそれなりにワークしてきましたが、今年はトランプの政治的発言の中で本当にワークするかどうかはよくわからなくなっているといえます。
為替でこの秋ひと稼ぎすることを考えるならば、あえてドル円は避けて、もう少しトレンドの出やすい通貨ペアを選択するということも視野に入れる必要が出てきそうです。
想像以上に難しい相場になりつつあるのが足元の状況で、為替のトレーダーは9月相場で動く通貨がどれなのかをしっかり見極めることが重要になります。
(この記事を書いた人:今市太郎)