8月相場というのは株も為替もそれなりのアノマリーがあることは、このコラムでもご紹介してきましたが、果たして今年はどの位そのアノマリーがワークしたのでしょうか。今回はそれにフォーカスしてみたいと思います。
安定の豪ドル円はまさにアノマリー通りの展開
まずは豪ドル円ですが今年8月1日の始値が83.02円で8月15日、丁度トルコリラの騒動があった頃に19.69円まで下げて底を打ったあと、上昇に転じます。
しかし、月末にかけてまたしても下落となり、とくに31日にはドル円、クロス円ともに下落したことから終値は79.908円と大きく下げて終わることとなりました。
2009年からの過去10年でいいますと陰線引けの確率はなんと9割ということでアノマリーとは言いながら、圧倒的に高い確率で推移していることがよくわかります。
豪ドル円 6時間足
毎年この時期にはいろいろな要素が発生することになりますが、豪ドル円は安定した形でアノマリーを守り切ったことになります。8月1日に売って15日に買い戻しても、3.3円程度抜くことができていますし、そのまま放置しておいても月末にはやはり同程度の利益をあげることができたことがわかります。
ドル円も8月アノマリーは達成
さて、市場でもっとも多くの国内個人投資家が参加しているドル円相場ですが、8月1日の始値は111.88円で月末の終値が111.092円でしたからこちらも陰線引けということでアノマリーは的中したことになります。
ドル円6時間足
始値と終値だけみますと差はそれほどでもありませんが、こちらも21日に109.774円まで押し込む場面がありましたので高値で売っていれば2円ちょっととれた勘定になります。
豪ドル円に比べると値幅は小さくなりますが、月初に売っておけばそれなりにとれるチャンスがあったことがよくわかります。
株はNYダウも日経平均も下げにはならず
為替の世界では2つの注目通貨にしっかりアノマリーがワークしましたが、株の世界ではどうだったのでしょうか?
NYダウについては始値が25,333.82円で終値が25,964.82円、最高値は26,028.83円でしたから、お盆のあたりトルコリラの急落に絡んだ時期には下落に転じる展開となりましたが、終わってみれば陽線引けになっていることがわかります。
日経平均は、NYダウよりもぱっとしない展開が続きましたので、下げた印象しかないという方も多いかと思いますが、ふたを開けてみますとかろうじて陽線で引けている展開となっています。
ただ、こちらもお盆休み中にトルコリラの急変の時期一旦2万2000円を割る展開になったことは記憶に新しいところです。
このように8月は本来、株価が下押しし易く、とくに米国の中間選挙年の場合には中盤から下げ始めることが多いNYダウも、堅調さを保って8月を乗り切ってしまい、9月相場に入ろうとしていることがわかります。
本来9月の米株はさらに下落し易くなるわけですが、どうも今年は例年とは様子が異なることが感じられます。その大きな原因はトランプにあります。
中国叩き、トルコ叩きで味をしめたトランプ
この8月、例年の相場のアノマリーとまったく違う結果を作り出したのは、まさしくトランプの政策と発言であったということができます。
女性問題やロシアゲートの問題で全米のメディアから叩かれまくっているトランプですが、経済の世界では貿易不均衡から中国を叩きまくっていることが国民からの幅広い支持の回復につながっています。
また、トルコの牧師解放をめぐって制裁措置を発動したことでキリスト教原理主義者からも高い支持が得られていることから中国叩き、トルコ叩きが中間選挙に非常にプラスにワークしているというのです。
また中国と新興国を叩くことに加えてFRBが粛々と利上げを行っていることから「過剰流動性」で世界各地に撒かれた資金が米国に回帰してきております。
その資金が一旦債券相場に入り込むことから、債券金利は下落、これを好感して米国の株式市場が上昇を継続し、ゴルディロックス相場が依然として延命していることから、この夏のNYダウもNASDAQも上昇して終わっており、このままでいくと11月までは同様の状況が続く可能性がでてきているのです。
ただ、日経平均はNYダウが上がれば連動性が高いものの、外国人がほとんど売りに回っているということで日銀もまともにETFを買わない中ではどうも勢いの感じられない展開になってしまっているというのは現状です。
さて、レイバーデー明けから米国は本格的な年後半相場に突入し、センチメントが大きく変わることも予想されます。ここからどのように相場が動くかについては注意深くその動向を見極めて参入していきたいところです。
(この記事を書いた人:今市太郎)