トルコリラの暴落で散々投入した証拠金の殆どを溶かしてしまい、追証が入れられずに「強制ロスカットを食らって殆どの資金を失ってしまった」という悲劇的な話がネット上でも話題になっています。
毎日毎日金利がもらえるという「インカムゲインの投資」については本邦の個人投資家は世界的に見てもことのほかお好きなようで、気がつくと高金利通貨をベースとしてインカムゲイン投資にかなり多くの人達が参加していたことが今更ながらにわかる状況です。
しかしこの高金利通貨でこつこつスワップがもらえる話というのは現実の世界ではまったく機能しておりません。今回のトルコリラの暴落でも売り持ちしていた時の「キャピタルゲイン」の方が「インカムゲイン」よりもはるかに大きかったことが改めて確認できました。
今回はそんなキャピタルゲインとインカムゲインの関係について、トルコリラを例にとりながらご紹介したいと思います。
トルコリラ円年初から売り持ちしていたら大儲け
ここではいくつかのケースをご紹介していきたいと思います。
まずトルコリラ円を年初の高値である1月5日に「30.291円」で10万通貨売って8月10日の底値で買い戻していたらどういうことになったでしょうか?
このトルコリラ円のスワップポイント、売りも買いも同値のポイントとなっている「くりっく365」はかなり良心的ですが、買いの倍のスワップを支払うことになる「ヒロセ通商」で売ってみた場合も含めて考えてみました。
この表は今年の年初の高値でトルコリラ円を10万通貨保有して、8月10日に売ったらどうなったかというシミュレーションをしたものです。
もちろん、最も高いところで売って最安値で買い戻すということは現実にはなかなかできないことですし、スプレッドもありますから実際の売買結果とは若干異なるものになる可能性はあります。
しかし、もっとも売りのスワップが高いヒロセ通商で取引したとしても10万通貨売り持ちしていたら8月10日までのスワップポイントはマイナス34万強ですが、キャピタルゲインのほうがなんと150万を超える金額になっていますので、はるかに大きな利益を確保できていることがわかります。
まあ今年はたまたま半額になるという暴落があったからで毎年売っていれば儲かった訳ではないと反論される方もいらっしゃると思いますが、2015年の高値で買った場合にどうなったかについてもシミュレーションしてみました。
トルコリラは一貫して下落し続けている通貨で、とくにトルコリラ円は高値で売れば必ず下がるトレンドを長期に示しています。
もうひとつの表でご紹介するのは2014年の12月の高値で売って一年間保有してその年の年末に売ったケースです。こちらも「くりっく365」「ヒロセ通商」ともにしっかり利益が出ていることがわかります。
つまり年間で32銭以上下落した場合には売り持ちをしても「くりっく365」なら確実に利益がでますし、まかり間違ってヒロセ通商で売り持ちをしても65銭以上下げれば確実に「キャピタルゲイ」ンの方が「インカムゲイン」を上回っていることがわかります。
店頭FX業者はしきりにスワップで儲ける広告を出し、しかも売りスワップを必要以上に高い設定にしてきたわけですが、少なくともこの3年近くは値を戻したところで売っておけば確実に利益がでたことだけは間違いなさそうで、いかにインカムゲインの発想が実態に即していないものであったかがよくわかります。
しかも長期間下落している相場を下げたところで買い増ししてみても単なるナンピンに過ぎず、傷だけ大きくしてしまったところがいまさらながらにしっかりと理解できる状況になっています。
レバレッジをかけていたら死亡するのは当たり前
お気づきの方も多いと思いますが、実はこの表で計算されている数字はすべてレバレッジをかけていない1倍の価格によるものです。
同じ原資にレバレッジをかけていたらもっと儲かっていたことになるわけですから、25倍のレバなどをかけて逆に買い向かっていたら死亡するのは当たり前の状況です。
人の固定観念のというのは恐ろしいもので、国内ではほとんど金利がつかない状況ですから年利で17%超などという数字ならそれは大きなスワップになり、年間の運用でさらに大きな利益を期待できると思ってしまうわけです。
しかし、新興国通貨という一度下がり始めたら「キャピタルロス」というものが莫大になり、そこにレバをかけていようものなら目もあてられないというのが足元の状況で起こってしまったことなのです。
「印象だけを頼りにトレードする」ことがいかに「リスキー」かということが改めて示現されたケースといえるのではないでようか。
(この記事を書いた人:今市太郎)