久々にユーロドルの話題です。先週金曜日(10日)にトルコ危機に関連するフィナンシャルタイムズの「トルコ危機報道」をきっかけにして、サポートラインとなってきた1.15を下抜けしてしまったユーロドルはその後も大きく下押しする展開になっております。
多くの市場参加者が認識していた「ヘッドアンドショルダー」のネックラインを簡単に抜けたことから、どこまで下落するのかがここからの大きなポイントになってきました。
ここのところ何の方向感もなく、ほとんど話題にできなかったユーロドルでしたが、果たして再度パリティ方向を目指してひた走るのかどうかに注目が集まります。
あまりにも有名なヘッドアンドショルダー
ユーロドルに関しては過去にも何度も「ヘッドアンドショルダー」を長期間形成し、その後下抜けしたことから、大きく動くのではないかといった思惑でショートのポジションが溜まり過ぎ、結局大きなショートカバーがでて、お仕舞いという猛烈な期待外れに終わったケースがあります。
確実に下落するとはなかなか言えないものがありますが、もし本当にこれがワークするのであれば、ここから1.06あたりまで下押ししてもなんらおかしくはない状況が展開することが考えられます。
年初に1.03まで下押ししているだけにパリティを超えて下落するとまでは言えませんが、ある程度の下落は期待できそうな状況です。
トルコ危機がいきなりユーロを直撃
11日英国のフィナンシャルタイムズ紙が最近のトルコリラの下落により、トルコに大きな債権をもつ欧州系のスペインのBBVA、イタリアのUniCredit、フランスのBNPパリバといった銀行のエクスポージャーを欧州の金融当局が懸念していると報じました。
このことから日本時間の午後2時過ぎぐらいから、いきなりユーロドルは下落を始め簡単に1.15を決壊させて1.14すら割れるほどの勢いで下落してしまいました。
FT紙の記事で気になるのはトルコの金融機関の資産の40%に相当する外貨の借り入れに対するヘッジが十分に行われているとはいえず、今後のデフォルトのリスクを懸念しているとともに、「既に目に見えないデフォルトが発生している」との疑いを持っているといった内容です。
これは、かなり刺激的な記事で、ギリシャ危機の再来を思わせる雰囲気が漂ったこともユーロドルを大きく下落させる要因になったのだろうと思います。
また、何より1.15を割れたことから投機筋が猛烈な売り浴びせを行ったことも推測されるところです。
IMMのポジションで見るとあまりバイアスがない状態
ところで直近に発表されているIMMのユーロの持ち高レポートを見ますと、ネットではユーロ買いが減少していますが、売り、買いともにポジションはかなり残っており、大きくバイアスがかかった状態ではないことがわかります。
ただしロングの枚数は17.8万枚を超えていますから、これが巻き戻しになった場合には、かなりの投げがでてユーロドル相場がここから大きく下落することも十分に想定できるところにあることがわかります。
ちょうど夏休み期間の真っただ中ですから、今後大きく動くのかどうかは今一つ不明な状況ですが、逆に市場参加者が少ないだけに投機筋の売り浴びせで思わぬ下落が加速することにも注意が必要となりそうです。
またトルコ関連での欧州銀行の動向の続報も重要で、内容次第では確かに欧州圏を巻き込んだとんでもないテールリスクになっていく危険性もありそうです。
ここ数年新興国と新興国に属する企業は、ドル建ての債券や債務をかなり多く抱えており、米国の金利が上昇しているだけでもこうした債務のロールオーバーが難しくなりつつありますが、エルドアンとトランプのメンツをかけた対立に見えたトルコ危機は、かなり大きなリスクの引き金を引きかねないところに差し掛かっていることがわかります。
(この記事を書いた人:今市太郎)