ここのところ下げ止まったのかと思われた「トルコリラ円」が政治的な状況からさらに2日の東京タイムからロンドンタイムに入るあたりで大きく下落してしまい、とうとう22円を割るという「史上最安値を示現」することになりました。
この状況は大きな下落で一旦終わったかに見えますが、まだ下げ止まったとは言い難く迂闊に下げたところを買い向かわないようくれぐれも注意が必要となります。
できることならば一旦「損切り」をして退場し、どうしても売買するなら様子を見てから入り直すことがお勧めとなります。
※トルコリラ円5分足 2日東京タイム~ロンドンタイム
今回の下落はきわめて政治的な背景から
トルコリラ下落の背景は既に報道などでもご存知かと思いますが、トルコの裁判所が7月31日、テロリズムなどの罪に問われている米国人牧師、「アンドリュー・ブランソン氏」を自宅軟禁から解放するよう求めた申し立てを退けたことがきっかけとなりました。
これがトランプ大統領の逆鱗に触れる形となりました。トランプは、「ブランソン氏を釈放しなければトルコに大規模な制裁」を発動すると発言。
それに対し、エルドアン大統領の報道官は31日「いかなる脅しにも屈しない」と述べ、米国が制裁を発動すれば報復措置を講じると徹底抗戦する構えを見せたことから話がエスカレートしております。
『報復措置合戦』に展開しかねない状況になっていることから、トルコリラはドルに対して大きく値を下げ、対円でも同様に下落して史上最安値を更新中という状況です。
対円では20円切れすらありそうな下落ぶり
このトルコリラ円のチャートを見ますと月足でも週足でも日足でも「ほとんど同じ形状」をしており、一貫して値を下げていることがわかります。
※トルコリラ円 日足チャート
上記のチャートは2008年以降足元までの相場状況を示したかなり長いものですが、2014年以降は一貫して下落を辿っており、その間に金利が多少上下したことから凸凹はありますが、すでに2013年の「56.639円」から見ますと足元の価格はその4割に満たないものであります。
長期レンジで一定以上のレバレッジをかけていれば、いくら追証を足しても確実に原資を失う形になっていることがわかります。
一貫した下落局面で値を下げたところで「ドルコスト法」だと言いながら単なるナンピンをしても、たしかにスワップポイントは金利の上昇で非常においしいものがありますが、もとの通貨価格はどんどん劣化していくだけです。
莫大な資金を投入しても「最後に追証が支払えない」と結果的に強制ロスカットを食らって、とうとうすべての資金を失うという典型的なモデルにはまり込んでいることがわかります。
確かに価格が上昇しなくても低位で安定してくれていれば、十分に取引妙味のある売買といえますが、ここまで価格が下落してしまいますと、レバレッジをかけた取引では簡単に相場の下落が原資を失うことになるため、相当な注意が必要です。
この手の売買ではとにかく「ナンピン」はせずに投入した資金で稼げるスワップの総計がもとの原資と相殺してマイナスになるところで、一旦退場することが必要になります。
とくにトルコリラ円は架空通貨ペアの最たるもので市場参加者のほとんどが買いで入っているだけですから、価格が下がり始めて皆が売りに殺到すると予想以上に価格が下落してしまうところが大きなリスクとなります。
また損切りをしない本邦の個人投資家の強制ロスカットも、ほとんど同時期に発生することから、それがまた引き金になって価格を下落させてしまうという悪循環にはまり込んでいるのです。
今、トルコリラのポジションをお持ちの方はぜひ原資とスワップの相殺をしてみて、どうなっているのかをチェックしたうえで、一旦退場することを強くお勧めします。チャートの形もすこぶるよくありませんから、ここから先さらに下落するリスクは相当高いのではないでしょうか。
(この記事を書いた人:今市太郎)