日銀の政策決定会合を相前後して、31日、1日には米国FOMCも開催される予定です。今回は記者会見も設定されていませんし、そもそも利上げは予想されていないことから非常に「地味なイベント」となり、ほとんど市場への影響は考えられていません。
しかしながら注目されるのは日本時間2日午前3時に発表となる「FOMC声明の具体的な内容変化」ということになります。
すでにトランプ大統領は拙速な利上げに不快感をあらわにしており、FOMCの投票メンバーではないものの風見鶏と言われるセントルイス連銀のブラード総裁も「もはや利上げは見送るべき」などという発言をしていますから、FOMCがどの程度トランプ発言に耳を傾けるかが非常に注目されるところです。
もっとも同総裁は「FRBはトランプ大統領の米金融政策を巡る発言に影響を受けることはなく、議会により定められている責務の達成に注力している」と述べてトランプのいいなりで動いているわけではないと火消しにも回っており、なかなか微妙な発言を繰り返しています。
FRBは人が思っているほど独立した立場にはない
トランプが金融政策に口出しをはじめたことから、FRBの独立性といったものが危惧され始めています。これまでの米国FRBの議長選出は、必ずしも政権の交代タイミングとリンクしているわけではないことから、民主党政権時のFRB議長がそのまま共和党政権でも継続するといったことは確かにありました。
しかし、やはり政権が変われば確実にアサインされる人物も変化しているのが実情であり、さらに理事などについても政権から送り込まれる人物が結構数多く存在するだけに、組織としては独立しているかも知れませんが、政権意向にそった運営がなされてしまうリスクは想像以上に強いものがあります。
ましてパウエル議長はイエレンのクビを切ってトランプが据えただけに、トランプ政権の意向や共和党の中間選挙に向けた勝利を下支えするような忖度があってもおかしくはない状況です。
確かに今年は「年間4回の利上げ」がかなり鮮明にはなりましたが、最近のパウエル議長の発言では、今のところ漸進的にといった言葉遣いを始めており、これまで登場しなかった「今のところ」という言葉が足されていることから考えても、ここから宗旨替えがある可能性が十分に考えられるところです。
利上げ後ずれなら株式相場は現状が維持される可能性も
ここで注目されるのは、利上げが後ずれとなると少なくとも11月の中間選挙までは足元の「ゴルディロックス相場」が継続するということです。
パウエル議長の忖度のみならず、現状で4つ空席があるFOMCで投票権を有する理事のポジションにトランプの意を汲んだ人物を送り込めば、かなり政治的に調整するFRBがここから出来上がる可能性もあり、今後のFRBの動きとトランプの言動には大きな注目が集まるところです。
現状では米国のインフレも思ったほど進行していませんから、利上げのスピードだけ抑えただけでも株式市場にはかなりプラスになることは間違いなく、米系のファンド勢のかなり多くがこのシナリオが実現することを想定しているともいわれています。
この動きはドル円にも大きな影響を与えることになりそうですが、冷静に中央銀行の現状を見てみますと、ECBは複数国の金融政策部門ですから、特定国になびくことはありません。
しかし、日本などは財務省出身の役員が日銀総裁をやっているわけですし、「アベクロ」と呼ばれるようにほぼ一心同体の状況で、政権意向は完全にマル呑みしているわけですから、そうそう独自の金融政策など期待できないことだけはよく理解しておく必要がありそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)