ここのところ、ドル高がなぜ足元で進行しているのか、またドル円がなぜここまで上昇するのか理解できないといった問い合わせをツイッターなどで結構いただきます。
このコラムでもそうですが、なんとかその理由は無理やり見つけてご説明はしているものの、ここまで上昇した正確な理由を語っているのかと言われると必ずしもそうではない可能性があります。
ファンダメンタルズ的な視点で市場を眺めますと、ここまでドル高が進む材料はほとんど見当たらず、このロジックから一定の「戻り売り」をしている本邦の個人投資家がほとんど踏み上げられているのが現実のようです。
実際には戻り売りのショートカバーが利用されて上昇か
ここのところの相場の動きをもう一度おさらいしておきますと、まず7月11日の「London Fixing」で上伸したドル円が110.500円というここ数年のレジスタンスラインを超えたことで、相場のストップがつきはじめ、その後じわじわと上昇して翌日の朝3時過ぎになんなく「112.173円」まで上伸することとなります。
ドル円5分足 7月11日
近辺本邦の個人投資家は、この段階でも112円近辺にかなりの戻り売りを仕込んでいたものと思われますが、相場は上昇してもショートになっていることから、下がることがなく、さらに相場はこうした戻り売りの損切りを利用して112円台後半に上昇することとなります。
ドル円1時間足 7月12日
近辺ここでも一旦上値がさえぎられる形となり、今度こそはというレベル感から、戻り売りが溜まる形となるのです。
翌日13日のロンドンタイムの夕刻「112.800円」をやっても抜けなかったことから、今度は相場が下がり気味になり、戻したところで多くの戻り売りがまたしても増えたことが容易に想像されます。
ところがこれが18日のパウエル議会証言で、再度突き上げられてストップロスを巻き込む形で翌日の19日の東京タイムにとうとう「113.137円」まで吹き上がる原動力となったのは間違いなさそうです。
ドル円1時間足直近
どの上昇の動きもストップロスを巻き込む、いわゆる「ショートカバー型」であることから、ストップが刈り取られるとそこから先は上昇しなくなり、上値でまたしても戻り売りがたまり始めると、さらに「ストップハンティングが連鎖して再度吹き上がる。」という構造を実に短期間に3度以上繰り返していることがわかります。
足元ではストップロスだけで113円台まで吹き上がった相場であることから、113円を果敢に買い上げる市場参加者もなくNYタイムの入り鼻に112.700円というパウエル議会証言の前レベルまで押し返されて、その後も113円には戻れないままの状態を継続中です。
もちろん誰かが買い仕掛けをするから、ストップロスがついて相場が上昇するわけですが、一旦損切りが出始めるとあとは連鎖になりますから、大きな資金を投入しなくても意外なほど簡単に相場が駆け上がってしまうことが容易に想像できる次第です。
高値のじり高は再上昇の恐れ
ここからの動きに関してですが、一旦113円台から押し戻されたドル円が113円台でまたしても戻り売りが溜まってじり高になり始めれば再度ジャンプして上値を試しに行くことになりそうです。
もうこうなるとファンダメンタルズもなにも関係ない世界で、ひょっとすると7月一杯はこの手の動きに終始する可能性も出始めています。
ただ、113.400円レベルは年初来高値ですからまた戻り売りも多くなりそうで、これを超えると114.500円レベルまでの上昇は考えられそうな状況になってきています。
あとは時間との闘いで、7月にどこまで上伸できるか次第にも見えますが、仮に113.400円近辺で息ついた場合には、今度は一転して反転下落に向かうリスクは充分にあり、ここからはドル円のプライスアクションに十分注目していきたいところです。
最後にアストロロジー頼みにはしたくはありませんが、7月26日から水星が逆行をし始め、サイクル理論的にもこの7月26日あたりから動きに変化ででるようなので、さらに吹き上がるのか反転するのかを見極めることが必要になりそうです。
日本株も日経平均が2万3000円に接近すると上値は重くなりがちで、ほとんど市場間の相関性はなくなっていますが、この26日あたりのピーク相場転換期だけがいくつもの材料で揃いはじめているのが気になるところです。
ちなみに株価の世界では「二日新甫は荒れる」とよく言われますが、今月はまさにそれですから、残り半月弱に何かが起きることも想定しておくべきでしょう。
(この記事を書いた人:今市太郎)