いよいよNATO首脳会談が始まりましたが、大方の予想通り、米国トランプ大統領はNATO加盟国の費用の拠出を強く求めました。
また、ドイツなど複数の国がロシアとエネルギー供給のためのパイプライン合意をし、ロシアに多額の資金を支払っているのに、「米国が欧州諸国を多額の資金で守るのは不公平である」との主張を強く押し出し、初日からドイツとかなり険悪な関係になりつつあります。
これは当初から想定されていた事態であるだけに、それほど驚くべき問題ではありません。
しかし、トランプは欧州の安全保障に多額の費用を負担するつもりがないことを鮮明にしており、ここでも米国の世界に対する安全保障のあり方が大きく変化しつつあることを明確にし始めています。
米国はドイツからの米国の駐留軍の撤退も視野に入れ始めており、米国中心で長年培われてきた世界の安全保障体制というものが大きく変化しようとしていることがあらためて確認された状況となっています。
しかしそれにも増してドイツと米国が対立する構図が非常に明確になりつつあり、80年代を知る向きにとっては「ブラックマンデー」前のドイツと米国の状況を彷彿とさせるような印象が強くなりつつあります。NATO首脳会談は今のところ大きく為替には影響を与えていないようにも見えますが、直近のドル円の買いは微妙にその影響を受けている可能性もありそうです。
米株下落の中ドル円買いが著しく進む状況に
11日のNYタイムでは、米中の貿易戦争激化を嫌気して米株は大きく下落をしていますが、それとはまったく別にドルが強含み、特にドル円は111円台初頭から112円近辺までドル買いが進んでいます。
相場全体に買い意欲が強いことが見て取れますが、一方で投機筋の米国への資金還流策からドル円も買われている可能性が強く、これも一応実需というべき買い切り玉ですから、一定の買いが終わった場合にそこからドル円がさらに上伸できるかどうかが大きな注目点になりそうです。
テクニカル的には125円台から降りてきていた上値の抵抗線を抜けた形になっていますので、さらに上方向を目指す可能性も十分に出てきていますが、112円台で頭を抑えられて反転下落するリスクもまだ残されているだけに、ここからドル円がどのような動きをするのかも注目されることになりそうです。
今週月曜日に発表されました「シカゴCME」の「IMMレポート」によると、投機筋のドル円のドル買い円売りポジションは前週からも一段と増加しており、ドル円の上昇を大きくサポートするものになっていることがわかります。
ただ気になるのは相場の「逆指標」として働くことが多い、小口投資家のドル買い、円売りが非常に増えていることで、ドル円ロングにバイアスがかかりすぎますと荷もたれして、下落に転じるリスクも考える必要がありそうです。
本邦の個人投資家は111円台中盤で、相当戻り売りした可能性も高く、ここからはドル円もかんたんに下落しない状況になることも考えられますが、トランプ発言一発ですぐに50銭程度は下落する相場が続いていますので、要人発言にも十分注意が必要になりそうです。
また米系投機筋のレパトリ需要のドル買いが一巡すると、大きく下落に転じる危険性もあり、高値でロングでついていくのも相当慎重に対応すべき状況にあるようです。
材料的にみますと、ドル円がさらに114円方向や年初来高値を目指すのは7月としてはかなり違和感のあるところで、買いについていくとしてもかなり引きつけてから、乗っていかざるを得ないのが正直なところです。
一定の動きがではじめますとアルゴリズムも一斉についていくことになりますから、動きは増幅されやすくなりますが、意外に簡単に終息してしまうこともある点には注意が必要になりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)