昨日のドル円相場はたいした材料もないままに、一本槍でドル円が上昇する展開となり、NYタイムには5月21日の高値となる111.395円を試しに行くほど上値を追う展開となりました。
NYタイムはそのまま111円台をキープしていたことから、さらに11日の東京タイムも上値追いの動きがみられるかと思った引け際の瞬間に「米国、追加で2000億ドル規模の対中関税リストを準備」というヘッドラインが踊ったことから、ドル円は大崩れをなり一瞬にして111.200円台から110.850円にまで下落する動きとなりました。
この報道には続報がありませんが、早ければ本日にもリストを公開という内容になっていることから、上値はかなり重くなりそうで、いきなり反転下落相場への展開となっています。
・ドル円5分足チャート
株も為替も楽観すぎ
先週米国、中国双方が関税の実施を決めたことから、材料出尽くし感も強くなったことが起因して株式相場は週明け以降も大きく買い戻される展開となっています。
しかし、この話はそう短期的に解決のつく問題ではなく、あまりにも相場が楽観的過ぎるのではないかと思った矢先のこの報道で、またしても株式市場は上値が重い展開になりそうです。
今週は本日から「NATO首脳会談」も開催され、米欧で相当な意見の応酬が行われることが容易に想像できるだけに、相場の上昇要因が多いはずはないのですが、なんとなく楽観視している市場が株も為替も安易に持ち上げてしまったというのが正直なところなのでしょう。
ドル円はまたしても111.400円を超えられなかったことから、上値は重くなることが予想されます。
当面ドル円は不透明感が高くなり、ここからの政治的なイベントの報道にも相当注意が必要となってきそうですが、少なくとも今の材料だけで見た場合には、112円を大きく乗り越えて上昇していくような相場にはまったく見えなくなりつつあります。
短期投機筋が動いている可能性も
大手のヘッジファンド勢は足元の株式相場に積極的に投資する姿勢をかなり手控え、資金を現金化して様子を見る動きにでています。
しかし、その一方で短期の投機筋はトレーディングベースで夏休み前にひと稼ぎしようとする動きを見せているようで、楽観相場も「こうした筋」がけん引している可能性がありそうです。
米国の株式市場は中間選挙年のアノマリーから「8月初旬にピークをつけて、11月まで下がる」可能性を想定しているファンドが多いようですが、今年もそのような展開になるのかどうかが気になるところです。
7月に下落が起きるのか、8月になるのか、9月までずれ込むのか、はまったくわかりませんが、大暴落とはいかなくても調整がでればそれなりの値幅になることは間違いないため、ドル円もこうした下押しの展開に巻き込まれると、5円以上簡単に下落するリスクはありそうです。
ここからの米株の動きと、債券金利の動きには常に注意を払うことが必要になりそうです。
7月は月間ベースで見ても「陰線引けになりやすい」のがドル円相場の特徴です。ですから、依然として注意しなくてはならないのは、上方向よりも下方向といえそうです。
今月も後半に入ってきますと、一段と市場参加者が減ることになりますから、ちょっとした報道でもアルゴリズムが大きく反応して、ボラティリティの大きな相場が展開することが予想されます。
やはりこの時期でも「ストップロス」なり、「トレーリングストップ」なりをしっかりおいて売買することで、闇雲に資金を減らさない工夫が必要です。
恐らく、もうすぐ上か下か明確な方向感がでてくることになるものと思われますので、それまでは無理せずに相場の様子を見ることも大切な時期になります。
(この記事を書いた人:今市太郎)