6月後半、英国では議会でEU離脱関連法案が可決し、EU法を国内法に置き換える法案が通ったことから一歩先に進んだように見えましたが、与党内でさえ親EU派と徹底離脱派が混在しており、メイ首相はどちらからも突き上げを食らうという極めてやりにくい状況に陥っています。
そして週明けにはデービス欧州連合(EU)離脱担当相が8日夜に辞任、さらに9日ボリスジョンソン外相が辞任することとなり、どうもメイ政権がこのままBREXITを完結させられるのかどうかも怪しい状況になってきてしまいました。
曖昧な国民投票が結局尾を引く状況に
為替のクラスタでは2016年6月23日に実施した英国のEU離脱を問う国民投票が翌24日の東京タイムに結果判明したことから、ポンドをはじめ多くの通貨ペアが暴落が起きたのは記憶に新しいところです。
もともと当時のキャメロン首相が選挙に勝たんがために、国民に安易に約束した法的拘束力のない国民投票を実施してしまったところあたりから間違いが始まっているのです。
本来は離脱派が勝つとは思っていなかったのでしょうが、結果は離脱派52%、残留派48%ということになりキャメロン首相は辞任、その後を受け継いでBREXITありきでもともと国内でも細かく決まっていなかった離脱プロセスを必死に乗り切ろうとしているのがメイ首相ということになります。
足元ではドイツでも意味を巡って、国を分断しかねない内紛が起きているのはご案内の通りです。
この英国のEU離脱も2000年台から急増した東欧やEU新加盟国からの移民に仕事を奪われるという国民の不満が鬱積して、結局EU離脱問題にまで発展したわけで、人の移動に関しては比較的寛容と思われた英国も移民については相当厳しい意見を持つ国民が多いことを改めて実感させられました。
強硬離脱派からそっぽを向かれた形のメイ首相
メイ首相は、保守党のベテラン議員、デイビッド・デイビス氏を欧州連合離脱担当相に任命し、英国のEU離脱のため新省を発足させました。
また国民投票の際に離脱を推進した、リアム・フォックス前国防長官を国際貿易担当相に任命、またEU離脱派の中心人物であったボリス・ジョンソンも外相に任命して万全の体制でここまで臨んできたはずだったわけですが、今回このうちのデイビス、ジョンソンの2閣僚がメイ首相の穏健離脱に不快感を示して辞職するという事態に陥ってしまったというわけです。
もともとメイ首相自身はもっともハードブレグジットを志向してきた人物でしたから、なんとかまとめるために譲歩したはずが周辺から崩される形となってしまい、ご本人も不本意な状況ではないかと思われます。
交渉期限は今年10月
EUとの離脱交渉の期限は今年10月ですがこのままではうまく離脱交渉ができないまま「時間切れ」という状況も考えられるだけに結構足元の状況は深刻化しています。
この調子でいきますと、事前に通商協定などを決めない白紙離脱という方法もありえそうで、この秋までのマイルストーンははっきりしないまま突っ走ることも十分にありそうな危険な雰囲気が漂いはじめています。
為替の話に戻しますと、英国のEU離脱が進むにつれてポンドの買戻しが出始めているわけですが、ここからは政治的な状況で何かネガティブな材料がでるたびに反転して売られる形となることから本当にポンドを買っていいのかどいうかかなり微妙な時間帯に入り始めていることがわかります。
しかもトータルの状況として英国がEUから離脱した時点での問題が、どの程度解決するのかは現時点ではまったくわからないこともポンド買いに自信をもてない要因のひとつとなっていることは間違いなさそうです。
多くの通貨ペアにボラティリティが失われているだけに大きく動くポンドはかなり魅力的な通貨ともいえますが、はたしてこうした状況下で積極的に売買するべきなのかどうかについては相当慎重に考える必要がありそうで、テクニカル的に明確なトレンドがでるまで待ち続けるというのも一つの選択肢になりそうです。
BREXIT交渉自体は我々が考えている以上に複雑で、下手をすればメイ首相自身もはや長続きしない可能性も出始めています。
(この記事を書いた人:今市太郎)