6日に米国・労働省が発表した米6月雇用統計のNFP/非農業部門雇用者数は、2カ月連続の20万人台の増加となり予想外の伸びとなりました。
また過去4月、5月の2カ月間の数値に関しても3.7万件上方修正されることとなっています。その一方で、失業率は4.0%と、予想外に1969年以降49年ぶリ低水準となった5月3.8%から反転上昇しはじめています。不完全雇用率(U6)も7.8%と、7.6%から上昇しており一旦底をつけた可能性が高まっています。
そもそも失業率が5%を切ってどんどん下落するなどということはあり得ませんから、5月の3.8%というのはもう完全に底だったのかも知れません。
気になるのは失業率の反転上昇
NFPについては毎回この程度ですから、増加しても下落してもそれほど市場に大きな影響を与えるものではありませんが、もっとも気になるのが失業率がとうとう反転上昇しはじめたことです。
過去2000年のITバブル崩壊も2008年のリーマンショックも失業率が下落局面にあるときには株価は大きく下げることはなかったのですが、増加局面で大幅な調整をすることが極めて多く、今回もいよいよそうしたタイミングにさしかかりつつあることがわかります。
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これは米系のファンド勢もかなり気にしているポイントですから、今後来月以降も上昇が続くようですと、より一層の注意が必要になりそうです。ただ、相場を構成している材料は必ずしも失業率だけではなく、FRBの金融政策の変化も大きな影響を与え始めています。
FOMC議事録の内容についても見方は二分
ところで木曜日に発表された「」FOMC議事録」では引き続き、利上げ継続の意向は見えているもののトランプの貿易戦争でどうやら景気減速のシナリオを本格的に考える時期にさしかかってきているといった内容が色濃くなっており、FRBはここからは積極的に利上げを行わない可能性も出始めてきている状況です。
もちろん今年あと2回の利上げは実施するのかもしれませんが後ずれさせることも十分に考えられ、早ければ来年早々には打ち止めにする可能性もあるのです。
この利上げスピードの減速は足元のゴルディロックス相場を延命させることになるかもしれず、一時的に相場の下落を回避させることになるかもしれないものの、逆に2019年に大きなしわ寄せをするような政策になりかなねない点が危惧され始めています。
本来ならばこの夏場に一定の下落局面をつくることになれば、その先の大幅な暴落を防ぐという機能を発揮させられることが期待されるわけですが、このまま何事もないままに中央銀行バブルが継続してしまうと、来年本格的なインフレが到来したときにFRBの打つ手がなくなることも心配の種になりつつあるわけです。
米国の景気自体はあきらかに減速傾向にあり、長期金利も上がらないわけですが、ここでFRBが利上げを温存することが本当に正しいのかどうかかなり議論が分かれることになりそうです。
利上げをけん制するクドローNEC委員長
トランプ米政権の経済政策の司令塔である国家経済会議(通称NEC)のクドロー委員長は、先月29日にテレビ番組に出演し、FRBに対して極めて低速な動きを望むと述べてここからの利上げ加速をけん制する異例の発言をしています。
つまり中間選挙に向けてとにかく利上げを急がずに足元の相場を維持するように暗に示した形となっており、さらにパウエルFRB議長はそれを理解し極めて低速に動くことを望んでいるとも発言し、FRBがトランプ政権の意向を十分に忖度していることも示唆している状況です。
正直ここまで現職の閣僚がFRBに注文をつけ、議長も承諾しているかのような発言をするのもかなり異例の事態ですが、状況次第では今年残り2回の利上げもどうなるのかはよくわからないのかも知れません。
このようになかなか相場の先読みをするのには難しい材料が林立しはじめており、迂闊に断定することは禁物になりつつあります。
しかし、今年相場がなんとか持てば来年にしわ寄せがいって大変なことになりかねないですし、このまま利上げが進めば株式市場が中心となって我慢しきれない状況なることも考えられることから、ファンドを含めて投資判断に迷うところがかなり多くなってきているのが実情のようです。
(この記事を書いた人:今市太郎)