3日のNY市場はさすがに独立記念日前ということで利益確定売りが進み、株も為替もそれなりの調整をして終えています。
本日は独立記念日で米国市場がお休みですから、東京タイムが終わってロンドン勢がでてきても大きな動意が得られない相場になりそうで、今週は6日まで様子見のつよい相場が続くのかもしれません。
週後半はまたしても米中貿易紛争で関税実施合戦の行方が非常に大きくクローズアップされることになるのでしょうが、冷静に見ますとこれは完全にトランプが仕掛ける無血戦争の様相を呈しはじめており、一体どこが最終的なゴールになるのかがきわめてわかりにくい状況に陥りつつあるといえます。
トランプの登場は国際的な秩序を悉くぶち壊しかねないところのさしかかっていますが、この人物が大統領に当選したのも単なる偶然とは言い難いものが既に見え隠れし始めています。
一部の人間に富が偏在しすぎて資本主義が壊れかけの米国
米国の景気は足元でも他の先進国と比較してみても、かなりいい状況が続いています。
企業収益も確実に伸びてきたことがうかがえますが、日本とまったく同様で勤労世帯のほうはこれだけ景気がよくても賃金の伸びというものがほとんど見られないなっております。
毎月雇用統計時に発表される平均時給の伸びもパートの人達の時給が多少伸びた程度で、正直なところこんな数字が多少伸びたからドル円が買いだの売りだのというのは、殆ど大勢に影響のないどうてもいい話しになりつつあります。
問題は資本主義を構成するために、もっとも重要な要素である中産階級という存在が資本主義の本家本元ともいえる米国でどんどん消え失せようとしていることです。
どんなに景気がよくても利益はごく一部の企業だけに集中するようになり、1%以下の人達が利益のうちの9割近くをお持ち帰りになって残りは等しく貧乏というかなり深刻な状況が、いよいよ顕在化していることが米国の社会を大きく変えようとしていることがわかります。
これまで高度成長期は白人とそれ以外の人種の対立が明確化されてきましたが、もちろんそれも継続しているものの、中産階級から脱落した人たちの既得権益層に対する憎悪というものがかなり明確になってきており、トランプのような人物がまんまと大統領に当選してしまったのもやはり根底にこうした国民の不満が色濃く存在していることがわかります。
既得権益発想でみるとトランプはめちゃくちゃな存在だが・・
これまで米国が長年に渡って享受してきた利益獲得の体制をなぜトランプが悉くぶち壊し、それを国民が結構大多数指示するのかというのは従来からの発想をものさしにしてみると非常にわかりにくいものです。
トランプはめちゃくちゃだという結論しか出てこないものですが、結局のところ限られた既得権益者の利益が守られ続けることに米国民の我慢がすでに限界に達していることを如実に示しているのが、トランプの当選と各方面の既得権益者ぶち壊し政策への強い国民の支持に現れているとみると、今の米国の状況は非常に明確に見えてくることになります。
トランプが口にする不公平というキーワードは、不満の鬱積した白人の中間層以下の存在のとっては非常にわかりやすく、ウォール街も関係なければ軍産複合体も関係ない、シリコンバレーのITとも距離を置くトランプのやり方に国民が強く支持しているということは、ここからの米国はそう簡単にもとに戻らないことを強く示唆していると思います。
米中、米欧の対立も最初は脅かして落としどころを見つけるトランプの方法にすぎないと楽観視するのはかなり危険な状況になりつつあります。
本来ヒラリークリントンが大統領になれば、それほど大きな変化はなかったはずですが、ここまで既得権益者の利益をぶち壊す政策が進んでいるということは、金融市場にもそれなりの痛みが走る可能性は極めて高いです。
足元で多くの市場参加者が世界的にリスクヘッジのための取引に猛烈に力を入れ始めている現在の状況もよく理解できるものがあります。
日本株もかなり低位のレベルのプットオプションが大量に売買されているのが現実であり、多くの市場参加者がここからの相場が下方向に向かうことを相当気にしていることが明確になりつつあります。
皆が下がると意識すると意外に相場は下がらないものですが、逆にパニック売りが加速すれば相場は予想以上に下げてしまうことになります。
こうしたセンチメントの変化をどうとらえて、何をするかによって年後半の相場での利益獲得行動にも大きな変化が現れそうな状況になってきつつあるようです。
(この記事を書いた人:今市太郎)