22日のNY市場は8日連続下げを記録したNYダウが9連敗になるかどうかが注目されました。これで9日連続下げとなれば1978年以来のことになるはずだったわけですが、NYダウのほうはなんとか8連敗で打ち止めとなったようです。
ただ、NYタイムのスタート直後にトランプ発言で欧州の自動車に県税をかける話が飛び出したことから相場は総じて嫌気することになり、ドル円はいきなり109円台に突き落とされるというまさかの展開になりました。
ここのところの米国市場のひとつの特徴として、ドル円は一旦下落するとほとんど戻りを試さないまま低位で最後まで推移してしまうことが多く、東京タイム以降にショートが溜まりすぎて一旦跳ねるものと200日移動平均線に頭を抑えられるという面白くない展開が延々と続いています。
ただ、底値のほうも109.800円割れを延々と試しても絶対底抜けしないのもまた事実で、この間を彷徨う狭いレンジ相場の状況を呈し始めています。
米中貿易戦争に対する市場の織り込み度合いは様々
この足元での米中貿易戦争の状況については株式市場が先行して織り込み始めているようですが、為替のほうは要人発言が出るたびに、その都度反応しては元に戻る展開となっており、7月6日に関税実施となることからそれまでに米中でなんらかの話し合いが行われることで回避されるのではないかというかなり楽観的な見方が為替市場側に広がっているのが気になるところです。
しかし逆の見方をすれば関税が完全実施の見込みとなった場合には激しくドル円が売られる可能性が高く、7月のはじめに向けてボラティリティが急激に上昇することも相当注意する必要がでてきています。
トランプの戦略は中国とドイツ叩きの二本立てか
トランプが打ち出している中国への制裁はそれ自体が他国の産業にもかなり影響を及ぼし始めています。たとえばダイムラーでは米国の工場から中国にSUVを輸出していることからこの貿易戦争に巻き込まれると売上が減少するため既に売り上げ利益計画を引き下げており、株価は当然低迷しはじめています。
またドイツから米国に輸出される車にも高率の関税がかかりますから、米国内に工場があってもドイツにあってもみなダメということでどこで何を生産しているかで各メーカーごとに関税の影響の受け方が異なるものとなっているのがわかります。
実はこうした状況は日本もまったく同じで、米国に工場をもつ本邦の自動車メーカーも精度の高い高級車は依然として、日本から輸出していることから関税の問題が現実に実施となれば大きな痛手を受けることになりそうです。
またその一方で消費者物価が著しく上昇することを危惧してトランプはあまりドル高をうるさく言わなくなっており、輸入商品価格の上昇を為替で調整しようとしているという観測も強まっています。
米国の関税実施による保護政策は対象となる国以外にも様々な国に影響を及ぼすことは明白で、対中輸出の多い日本にもそれなりの影響がでることは必須となることから夏に向けてのドル円はトランプがたとえうるさく言わなくても上昇しにくくなりそうな状況が迫りつつあるようです。
ドイツは、長年EUをリードし続けてきたわけですが、メルケル政権の連立が移民を巡ってかなりぐらつき始めていますし、ディーゼル車のデータ改ざん事件などでVWのCEOが逮捕される事態が起きている上に、ドイツ銀行の経営不安の問題がまたしても顕在化しており、どうも様子がかなりおかしくなりだしていることから、トランプがドイツ叩きを集中すれば相当弱含んでしまうリスクも出始めているようです。
6月は来週で終了ですが、年後半については市場の変化に相当注意深く対応しなくてはならない時期になってきていることを強く感じさせられる週末です。
(この記事を書いた人:今市太郎)