市場で注目されていた米国6月のFOMCでは予想通り0.25%の利上げが実施されるとともに年間4回利上げが明確になりました。それを受けてドル円は瞬間110.840円まで吹き上がりましたが、結局111円台にのせることはできずに逆に下落してNYタイムの取引を終えています。
また債券金利のほうも2.992%レベルまで跳ね上がりましたが、さすがに5月末のイタリア国債暴落の影響で米国債のショートで損失を抱えた投機筋の買戻しが金利の上昇を抑え続けているようで簡単に3%には戻らない状況となっています。
注目の米国株式相場もさすがにFOMCのタカ派的内容を嫌気して下落して終わっています。そして今晩いよいよECBの政策決定が発表となりますが、緩和の巻き戻しがどのタイミングで始まるのかに大きな関心が集まりそうです。
ドル円5分足
Data INVESTING.com
問題はテーパータントラム再来するかどうか
ECBが今後どのような形で緩和措置の終焉を決めていくかが大きな注目点ですが、米国の金融引き締めが加速し、欧州の緩和に巻き戻しが入れば、ここ5年以上続いてきた世界的なやり過ぎとも思える中央銀行主導のバブル相場が終焉し、急激に過剰流動性が解消していくリスクがかなり高まりそうです。
2013年5月に当時のバーナンキFRB議長がQEの終焉を示唆したときにも明確なテーパータントラムが起きましたが、今回もごく至近なタイミングでこうした市場の癇癪が起きないかが非常に注目されるところです。
既に資金が相当量入り込んでいた新興国相場からはかなり米国に資金還流が起き始めていますし、リスクの高い新興国通貨はさらに対ドルで通貨安が起きることは時間の問題と思われます。
FOMCではこうした新興国への配慮もほとんど感じられない状況で、今後株価にどれだけネガティブな影響を与えることになるかも注目されるところです。
米欧ともに金融引き締めがはじまれば足元のゴルディロックス相場は11月の米国中間選挙まで持たない可能性があり、ここからは相場の大幅な調整に十分な注意を払う必要がありそうです。
米国の利上げは確実に経済に影響を与えている
現状の米国の金利レベルはまだまだ低いものがありますが、長年ゼロ金利であったからこそ成立してきた投資も多く、また依然として借金経済を引きずる米国では金利の上昇が国民生活にダイレクトに影響を及ぼすようになってきています。
自動車ローンやクレジットカードの滞納率はすでにリーマンショック直後を凌ぐレベルになっていますし、消費の原動力となる住宅販売も当然のことながらくらい影がさしはじめていますから、今年の年4回の利上げがこうした状況に拍車をかけかねないところにあるのは間違いありません。
また現状ではFRBの利上げによって短期金利は確実に上昇するものの、長期金利は米国経済の先行き不安も含めて簡単に上昇しない状況に陥っており、逆イールドが年内に示現してしまうリスクも出始めています。
通常逆イールドが示現してもすぐには相場の暴落は起こらないものですが、テーパータントラムが先行して顕在化した場合は必ずしもその時系列的関係が維持されないこともあり、いずれにしてもここからの相場は下方向にいきなり動いてしまうことに相当注意を払うべき時間帯に差し掛かっていることを意識すべきでしょう。
相場の下落タイミングを当てるのは至難の業ともいえますが、いよいよそのタイミングが近づいているように思われ、特にこの夏前後は相当な注意を払うべきなのではないでしょうか。
(この記事を書いた人:今市太郎)