ギリシャ危機から既に8年が経過しようとしていますが、今後は案の定イタリアで政情不安が高まりを見せてうり、株から債券、為替までイタリア関連のものは悉く売り浴びせにあっている状況です。
もともとギリシャ危機があったころから次はイタリアが危ないといわれてきたわけですし、総選挙にマジョリティの政党が形成されなかったのですから、連立の問題も開票直後から問題はずっと引っ張り続けていたはずなのですが、なぜか大衆迎合主義(ポピュリズム)政党「五つ星運動」と極右「同盟」が連立政権の樹立する話で一件宅着するかのように市場が何も警戒しないというきわめて不思議な状況になってしまったのです。
そしてここへきて結果的に連立政権樹立失敗となって急に慌て始めてリスクオフの相場が展開されているわけですから、なぜ急にこのあたりが大きなテーマとして突然クローズアップされてしまうのかもうひとつ理解しにくい状況であるともいえそうです。
リスクの中身はギリシャにそっくりのいつか来た道
イタリアはとにかく財政赤字が大きく、しかも今回の連立政権が財政支出を拡大することにも非常に市場が危惧する状況が続いていることが改めて認識されられる次第で、要するに借金の棒引きでもないかぎり政権が新しくなってなにか斬新な政策を打ち出すことはできないのが実情になっているのです。
このあたりも規模と中身は違うもののギリシャでもめた内容とかなり似ている状況であることは間違いありません。とにかく政権が樹立される前に再度選挙を行う必要がありそうですし、これが落ち着くまでにはそれなりの時間がかかりそうな雰囲気が強まっています。
当初は7月にも再選挙という話が出ていたようですが、夏は選挙をやりたくないといった大統領発言もあり、後ずれする可能性がではじめています。いずれにしてもどのような形で新政権が誕生したとしても財政赤字の問題は全く解決しませんし、ギリシャ危機の時にEUともめたようなことが延々と続き、またしてもEU離脱を意識した動きがでては相場を揺らすことになるであろうことは想像に難くない状況です。
問題はスペインへの飛び火
一方スペインでも問題が大きくなりかかっており、与党が絡んだ汚職事件で追い詰められているスペインのラホイ首相が国会審議で野党から進退を問われ国民から託された任務を全うすると辞任を拒否したことから不信任案が野党から提出される見込みで、こちらも政治の流動化が危惧され始めています。
こう言っては失礼ですが、南欧諸国というのは常に似たような政治状況が続き、どこも財政赤字を全く立て直すことができないところに陥って結局EUから妥協を求められるという毎度おなじみのプロセスを辿ることになりそうで、為替の世界では投機筋がこの問題が再燃化する前からユーロを売り込んでいただけにその勢いを加速させることで予想以上にユーロがドルと円に対して下落する相場が続いています。
ただ、大きく売り込まれますと一旦結構大きなショートカバー出るのがユーロの特徴でもあり、戻してはまた大きく下落するという下方向へのトレンドを維持した反復を繰り返しています。
恐らくこのユーロ売りの動きは夏一杯続きそうな気配で、足元ではドル円もすっかりその下落の動きに巻き込まれているだけにユーロ次第でドル円のレベルも変化することに相当な注意が必要になってきています。
イタリアはEUからの離脱も危惧されはじめていますが、UKが既に離脱を決めているだけに2010年のギリシャの離脱問題のころとはかかり状況が違ってきていることも確かで、ややもすればイタリアの離脱をドイツなどが引き止めない可能性もでてきているだけにどのような決着がついていくのかにも関心が高まりそうです。
とにかく当面はユーロの下値がどこまで行くのかにも注目が集まりそうで、為替相場のテーマは急激にユーロに収斂しはじめています。
(この記事を書いた人:今市太郎)