今年中に店頭FX業者のレバッジが10倍に規制されることが30日の第五回有識者会議を経て本決まりになるかと思われた金融庁でしたが、昨日突然10倍規制見送りの報道が飛び込んできました。
基本的にはいい話しですから素直に喜べばいいわけですが、返す返すも不思議に思うのはこの話がどこから湧いてきたのか?誰が言い出したのかという問題と、さらに今回見送りがなぜ決まったのかという二つの問題です。
東京金融取引所を助けるための策だったのか?
今回のレバレッジ再規制問題では一貫してその対象から外れそうになったのが東京金融取引所が運営しているくりっく365の存在です。
確かに発足当初は日本のFX業界を立て直し透明性の高いビジネスにするために一定の役割は果たしたものと思われます。
しかし、厳しい競争環境の中でこの「くりっく365」は徐々にビジネスのサイズを狭めることとなり、取引条件も決して改善させることができないまま殆ど市場のシェアのない状況が続いていたことは確かです。
一説によれば単に「天下り先の救済から思い立ったのではないか」という話さえ飛び出すほど唐突で、かつ効果のよくわからない規制案であったことが今更ながらに気になるところといえます。
突然の中止は長官の交代と何か関係あるのか?
足元では異例の3年目続投となっている歴代最強の長官とされる金融庁森長官ですが、ここのところいくつも問題が起き始めており、足元をすくわれかねない状況に陥っています。
ひとつは長官自ら旗振りをした仮想通貨の産業育成ですが、何を育成したのか知りませんが、みなし法人などを放置したところもはやボロボロの取引となってしまい、コインチェックの体たらくを招いていますし、そのほかの取引所も決して優秀な存在ではない状態をいわば放置してきた責任は大きなものとなっています。
またゆうちょや地銀の改革をめぐってもゆうちょが今頃になって森長官が社長に据えた長門氏が限度額撤廃を口にしはじめたり、スルガ銀行がかぼちゃの馬車への不正融資が大問題になったりとクビを締めるようなことが次々と起きている状況です。
今回のレバ規制中止は5回におよぶ有識者会議が終了する前に決定した模様で、そもそも金融庁が一旦口にしたことはこれまでもそう簡単には撤回されなかっただけに、どうしてこうも簡単に見送りすることになったのかが気になるところで、この森長官の問題となにか関係があるのかも詮索したくなるものがあります。
そもそも金融庁の成り立ちとは?
金融庁、英語ではファイナンシャルサービスエージェンシーというのは先進国ではどこにでも置かれる金融監督組織として有名ですが、日本では、もともと大蔵省の中に監督部門が置かれていたものの、ノーパンしゃぶしゃぶ事件などが起こり様々な弊害が明るみに出たことを受けて、財政と金融行政を分離して2000年の7月に設立された組織です。
したがってもともと同じ穴の貉から出発している組織であり、足元で連日繰り広げられている財務省の問題をみると、この組織も本当にまともに機能しているのかどうかかなりクビを傾げたくなる状況ではあります。
ともあれ、一旦レバ規制の話が後退したことは理由や背景がどうであれ個人投資家としては非常に喜ばしい限りです。
そのまま規制が進んでいれば恐らく日本のFX市場は壊滅的な状況に追いやられていたはずですし、相場から離脱する個人投資家も多数出現したことでしょう。
一旦収束しているわけですから、これ以上不満を言っても仕方ないですが、なぜこうした話がいきなり顕在化してしまったのかについては実に不思議です。
恐らく我々の想像のつかないところで何か全く異なる発想が働いていたのだろうと思いますが、とにかく本当に個人投資家のことを考えた監督行政を続けていただきたいと願うばかりです。
(この記事を書いた人:今市太郎)