ここのところ、ペンス、トランプと米国の政権の中枢を担う人物の口から6月12日の米朝首脳会談が開催されないかもしれないといいった不穏な発言が飛び出して、そのたびに為替相場は下押しを余儀なくされてきましたが、とうとう24日ホワイトハウスは正式に会談の開催中止を宣告することとなりました。
Source White house H.P
このコラムでも開催が危ういのではと既にお伝えしてきましたが、まさにその読み通りの展開となってしまい、発表と同時に株も為替も大きく下げる動きとなりました。
しかし前日からトランプがティーザーのように口にしていたこともあってか、為替市場のほうではドル円は60銭程度しか下げず、戻りは重いものの、下値も意外に堅い動きとなり東京タイムを迎えています。
再開の可能性を指摘する声も
今回の開催取りやめが米国サイドからの圧力なのか、本当に話し合いを諦めて武力行使にもっていくことになるのかはよくわかりませんが、金委員長もさることながら相手はトランプですから何をするかはわからず韓国の意向とは別に米国サイドがうごきはじめるリスクも考えておく必要がありそうです。
当面はこの決定を受けて北朝鮮がどう動くかですが、中国とも事前に話し合いをしているだけに規定演技の可能性もあり、今後の動向を見守る必要がありそうな状況です。
南北首脳会談で双方がにこにこしながら手を携えて話し合いをしていたのは一体なんだったのかとも思われますが、映像で見る以上に複雑怪奇なのが朝鮮情勢であることを改め痛感させられる事態となっています。
また漁夫の利で北朝鮮拉致被害者を何とか奪還することができれば、支持率の飛躍的回復につながるとひそかに願っていたであろう安倍首相の目論見は完全に消え去ることとなったようで、日本政府がまた圧力重視の姿勢を強めることになるのかどうかも注目されます。
為替への影響は北朝鮮次第
今後の為替への影響に関しては、北朝鮮がなにか事を起こさないかぎり、ここからさらに相場が下落するリスクというのはそれほど厳しいものにはならないのではないかと思われます。
むしろ再度歩み寄りといったものが見られた場合には大きくリスクオンにはならないでしょうが、相場の下落リスクは取り除かれることになりますからまさにボールは北朝鮮サイドに投げられた格好になっている状況といえます。
もともとこの会談が成功してもドル円が飛躍的に上昇するとは思えませんでしたが、少なくとも6月の上昇要因の一つが排除されたことでブルよりもベアの材料が増えた格好になっていることは間違いありません。
昨晩NYタイムでは一瞬ドル円が109円台を割り込む場面もみられましたが、108円台には武田のM&Aに絡むドル買いが待ち構えているという話もあり、意外に下値も堅そうな状況で、一旦上値狙いが収まった以上当面はレンジ相場が継続することを考えおくべきではないでしょうか。
一昨日のCTAアルゴリズム大暴れの結果ドル円をはじめとする通貨は、上昇するのか下落するのかよくわからなくなりつつあり、多くの市場参加者がドル円は戻り売りを試すことになると思われますが、それでも下がらないとなるとまたしてもショートカバーで相場が持ち上がることが考えられるうえ、コスト面で維持が耐え切れないとされているヘッジファンド勢のドル円の売り持ちの残り玉の解消が進むことになりますとまた一時的にドル円が上昇する場面も想定されます。
多くのファンド勢は今月半期決算となりますのでそれに絡んでポジション整理が出るとなると月末にまさかのドル円再上昇という場面に出くわす可能性もありそうです。
ここのところの相場の上昇はショートカバー主体の需給によるものが強いようで材料がなくなると相場はすぐに反転し易くなりますので、できるだけ短期売買に努めるとともに方向感の変化に柔軟についていかれる体制をとることが重要になりそうです。
おそらくこの数日でドル円を扱う個人投資家は想像以上にやられてしまったのではないかとも思え、週末に向けては静かな相場になることも予想されます。
(この記事を書いた人:今市太郎)