トランプ大統領は予想通りイランの核合意から離脱、独自の経済制裁を行うことが確実となりました。
これをうけて一瞬108.800円台前半まで下落したドル円でしたが、結果を受けては買い戻される動きとなり109円台を回復する形でNY市場を終えています。
確かに発表されてしまえばそれ以上の何かが飛び出すわけではありませんから、この手のネタは下げたらその後は買い戻されることが多いのも事実で、一応想定内の動きとなっています。
問題はここからの動きで、ドル円はとくに連休明けから方向感を失った動きが続いており、とりあえずレンジでの逆張りがそれなりに機能することとなっています。ただこれがそのままいつまで続くのかが大きな問題で、いずれ明確な方向が出ることになりそうな状況となってきています。
109.400円から上が重く108.800円以下には下がらない
連休中に上も下もやってしまったせいもあるのでしょうが、109.400円から上にはどうしても上昇することができないのが足もとのドル円で、とはいえ下値も108.800円が堅く、市場ではこのあたりに本邦の機関投資家が待ち構えているのではないかといった見方も強まっています。
昨晩のNYタイムもLondon Fixのあとにドル円が買い上げられる場面がありましたが、戻り売りがしっかり機能する状況となっています。
次の材料が明確に示現するまでは当分こうした持ちあい相場が続きそうな気配で、ドル高で円高という状況がドル円の動きを不明確なものにしているようです。
ここからは原油価格の動向に注意
イラン核合意から米国が離脱したことを受けて投機筋が仕掛け的に原油先物を買って吊り上げる可能性は十分にありそうで、当面債券価格とともに原油価格の動向にも注意が必要になりそうです。
米国の制裁にあたっては企業がビジネスを閉鎖する期間と原油取引を中止する期間として90日から180日の猶予期間が設けられることになっているようですが、その間に先物が買い上げられる可能性はきわめて高く、まさかの90ドル100ドルレベルまで相場が高騰するようなことがありますと市場の風景はかなり異なるものになりそうです。
ご存知のとおり米ドルと原油価格は、基本的に逆相関の関係にあり、原油価格が上昇すれば、ドルは下落し、原油価格が下落すれば、ドルは上昇します。
したがって足元ではユーロやポンドに対して強含んでいるドルの状況が変化することになるとドル円も下方向を見ざるを得ない状況となり、久々に原油価格に注目が集まるところです。
サウジアラビアはサウジアラムコのIPOに絡んで原油価格を最低でも80ドル程度まで引き上げたいとしていますからこの動きを否定する可能性は極めて低く、ここからは原油上昇の動きがさらに顕在化するリスクを考えなくてはなりません。
原油価格の低迷はここ数年主要国経済をデフレにしやすい状況が続きましたが、逆に価格上昇を受けてインフレが加速するようですと金利も上昇することから株式市場にも悪影響を及ぼしかねず、これまでとは異なる状況が展開することにかなり留意することが必要となります。
変化の兆しをしっかり見極める
いまのところレンジが続きそうなドル円ですが、ごく近い将来に持ち合いの世界から上か下に抜けていくことが予想されますので、そのタイミングがどこなのかをしっかり見極める必要がありそうです。
夏場に向けては株もドル円も上昇しにくいのが特徴ですが、米国株が果たして今年もSell in Mayとなるのかどうかにも注意しながら売買することが求められます。とにかく方向を間違ったと思ったら一旦損切りして入りなおすぐらいの柔軟な売買を心掛けたほうがよさそうな時間帯です。
(この記事を書いた人:今市太郎)