一部のメディアが伝えたところによりますと、正式に金融庁が店頭FX業者のレバレッジを10倍に規制することを年内に実施することになったようです。
四回ほど有識者会議を実施しただけで業界の抵抗もあまり感じられないままさっさと10倍になってしまうというのもいかがなものかとは思いますが、実際に10倍のレバレッジになったときにどのような事態が起きてしまうのかについてあらかじめ考えておきたいと思います。
証拠金額は全く別物となる
まずこの下の表をご覧いただきたいと思います。
これまで個人投資家に提供されてきた最大25倍のレバレッジを利用してドル円を売買する場合、足元の107円レベルならば1000通貨ペアは4250円ほどで取引が可能となっていました。
また1万通貨では42500円ほどの証拠金が必要となっていたわけです。ところがレバレッジが10倍になりますと、たった1000通貨ペア売買するのにも10700円が必要となり、相場が上昇すればもっと大きな資金が必要となるわけです。
1万通貨ですそ証拠金だけで10万円を超えるわけですからこれまでのように10万円程度から気軽に始められる投資とはかなり異なるものになってしまうことが容易に理解できます。
ちなみにですが右はじに記載したのは海外で888倍のレバレッジを利用した場合の証拠金となります。すでに25倍と比較しても一目瞭然でコストが安いのがご理解いただけるはずです。
消費者保護ということでいえばゼロカットを導入して投入した資金以上の損失が出ないようにしてくれてハイレバレッジで売買したほうが、失う資金も少ないですし、よほど利用者にとっては安全な状況と言えるのですが、金融庁の発想はどうもそうしたところにはないようです。
市場規模を縮減させるのが狙いか
現状でも国内のFX取引は5000兆円を超える規模になっており、このままにしておくと店頭FX業者の破綻リスクが高まるというのが今回の金融庁によるレバレッジ規制の大きな理由になっているようです。
しかし国内FXはほかの金融商品に比べると利用者の資金の焦げつきも少なく、今慌ててレバレッジを縮小する必要などはまったく感じられない状況です。
案に業者保護を名目にして市場を縮減したいだけなのではないかとさえ思うのが今回の内容で、おそらくこのままレバ規制が実施され、顧客がこれまで以上に証拠金を投入しなければマーケットキャップは簡単に1000兆円以下の規模になることが予想されます。
また一定以上の資金がないと取引できない市場になった場合参加者が激減することでさらに国内FXの市場規模は縮減することが容易に理解できます。
一方、国がなんとか確保したい円安という視点でみても国内のFX投資家の実に9割近くがドル円の売買をしており、しかも積極的ドル円を買う存在になっていますから、こうした個人投資家を排除した場合想定以上に円高が進む市場が示現する可能性も出てくることになりそうです。
なぜ今こうした規制を強化しなくてはならないのかさっぱりわかりませんが、端的に言えば国内業者を利用してもFXでは最初から大きな資金投入がないかぎり短期間で大金持ちになることはできないのが確定的な市場になるわけで、個人投資家としてはここからどうするのかを真剣に考える時期に差し掛かってきていることがわかります。
危ない危ないと言われる海外業者を利用するのか仮想通貨にシフトするのか、さまざまな考え方があると思われますが、とにかく10倍規制が実施されるとかなり利益を出しづらい市場が形成されることになることは間違いありません。
恐らく年内には実施の見込みですから、まだ多少の猶予は残されていますが、今のうちに今後の投資をどの領域で行うのかについては真剣に考えなくてはならない時間帯にさしかかっているといえます。
(この記事を書いた人:今市太郎)