シリア空爆が一段落して少しは値を戻すかと思われたドル円でしたが、窓空けして下落することがなかった代わりにその後上値を追うこともほとんどなく、下値も堅いが上値も相当重たい相場展開が続いています。
16日の朝の高値を超えられなかったドル円相場
16日朝からの1日の状況がわかるようにドル円を15分足をご用意してみましたが、早朝につけた107.600円台が一日の最高値でそこから延々とずるずる崩れて、その後は107,100円~107.250円あたりで半日近くもみ合いに終始するまったく面白味のない相場状況となってしまいました。
その後米債金利が一時的に上昇した夜の9時15分ごろになんとか107.400円手前まで戻しましたが、その後はいいところなくNYタイムは一貫してずるずる下げる展開が続きました。
大きな下落ではありませんし107円台に踏みとどまっているために損切も出ていない状況ですが、下値で買っても一体どこまで戻すのか非常に期待できない相場であることは間違いなく、売買妙味にかける時間帯が続いています。
日米首脳会談におけるトランプのツイートに要注意
テクニカル的にみますとドル円は108円に上昇すればどこかにショート勢のストップロスが待ち構えているためそれをヒットした時点で108.600円程度までは上伸してしまうリスクを抱えており、積極的な買いではないにせよ下値より上値方向へ動くことに注意が必要なのは間違いない状況です。
ただ、107円後半にはすでに輸出勢の売りも持ち込まれえてきていますから、果たして108円台に踏み込めるのかどうかが注目ポイントとなりそうです。
さらに17日(日本時間では実質18日)から開催されるマイアミでの日米首脳会談では米国側からの貿易問題、為替に関する具体的な要望が出る可能性は極めて高く、それとともに注意しなくてはならないのが歴代大統領には一切なかったトランプ自身のツイートによるヘッドラインリスクの顕在化の問題となります。
足元では元FRBのディレクターであったコーミーとの罵りあい合戦が続いていますが、安倍総理の訪米からはそのテーマが変わり、日本に対するあからさまな非難や要望が飛び出す可能性は十分に考えられます。
とくに為替を巡っては13日に発表されている半期ごとの為替報告書において日本は操作国認定こそされていないものの、依然として為替操作疑惑の残る監視の対象国となっているだけに、トランプのツイートでドル円の水準にいきなり言及するようなことがあれば、たちどころにドル円は円高に逆転する危険性もあり、相当な注意が必要となりそうです。
トランプが安倍首相をどう見ているのかも大きな問題に
政権発足時、比較的オーソドックスで多用な人材を閣僚として起用し、意外にまともな政治になるのではと勝手に市場から期待されたトランプでしたが、1年目はほとんどたいしたことをやらないように見えたものの今年に入ってからは当選時の公約を猛烈に履行し始める動きを見せております。
どうでもいい閣僚は次々クビにする始末で、結果的にはウォール街との親和性も低く、西海岸の民主党支持のIT企業も敵視、軍産複合体とも明確に一線を画しているのが実情で、政権内でももはやトランプの動きを止められない事態が続いているようです。
今回もシリア空爆は行ってみたもののシリア自体からの米軍の撤退を依然として目論むなど、その発想は既存の政権のものとは大きく異なる点にも注意しなくてはなりません。トランプの発想はかなり明確で、これまでの既得権益を貪ってきた勢力を徹底して切り捨てる動きに出ていることは明らかな状況です。
それだけに長年貿易赤字を米国にもたらしてきた既得権益国のひとつである日本の存在を叩いてくるであろうことは間違いなく、北朝鮮問題だけで会談が終了するとは到底思えないのが実情です。安倍首相の国内での支持率が大幅に低下して、ややもすればレイムダックになりかけていることをトランプがどう認識しているかによっても日本叩きの度合いに変化がみられる可能性はありそうです。
つまりまともな交渉相手とはならないと見ればボコボコに叩いてお仕舞いということもあり得ますし、トランプの発言からそのあたりを読み取ることも重要になりそうです。
いずれにしてもドル円にとっては上昇をサポートする材料は一切出てくるとは思えませんから、テクニカルとは別に戻り売りもあえて意識してみることも一つの方法になりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)