シリアの隣国であり地政学リスクが極めて高いトルコの通貨トルコリラが売り込まれて非常に窮地に立たされています。
国内では2015年5月にクリック365の取引所取引にトルコリラ円が上場されて以来かなり多くの本邦個人投資家がスワップ狙いだけでトルコリラ円を買い続けていますが、どうもこの間の流れを見ていますと、本当にスワップ狙いだけで買っていいものなのかどうなのかが非常に悩ましい通貨ペアであることがわかります。
リスク通貨だからこそ金利が高いと言えばそれまでですが、原資を失ってしまってはなんの意味もないのもまた事実です。今回はこのトルコリラ円について足元の相場状況を見てみたいと思います。
月足でみるととにかく下がりっぱなしのトルコリラ円
トルコリラ円の月足のチャートから見ていきますと、冒頭にも書きましたように2015年5月くりっく365での上場で話題になった段階はだいたい1トルコリラが40円ぐらいの価格になっていましたから、37%ほど足元の価格は下落してしまったことがわかります。
40円が25円になってもあまり深刻な気がしませんがドル円で考えた時には107円の価格がおよそ68円になってしまった状態ですからかなり厳しい状況であることは間違いありません。
もちろん今日の明日でいきなり価格が下落しているわけではありませんが、25倍のレバレッジなら1万通貨でも1万円ほどで取引できて、1日最大で85円、1か月で2550円以上のスワップがつくわけですから厳しい価格変動さえなければ約4か月で原資の投入分を確保できてしまうわけで、魅力的であることはよくわかります。
しかしもらえるスワップよりも価格による含み損が大きくなると結局何をやっているのかわからない状態になりますし、なにより市場参加者のほとんどがスワップ狙いでトルコリラ円をロングにしていることから現状のような大幅下落状態に陥ってしまうと、ロングの保有者が殺到して売り向かうことから流動性パニックを引き起こしてスプレッドは広がり、売るに売れないかなり深刻な状況に陥ってしまうのです。
とにかく少しでも回収しようということで投げ売りしてしまうと結果的にコツコツ稼いだスワップ分をすべて吐き出して逆ザヤということも十分にありうるわけです。
このトルコリラ円日足でみましても今年に入ってから買い向かった向きはかなり厳しい状況に追いやられており、しかもこの下げはさらに22円レベル以下まで下落するリスクに直面しており、レベル感からナンピンしても勝てる見込みはまったくつかない状況にあります。
為替の場合金利で稼ぐというのはまさに一丁目一番地の手法ではありますが、トルコリラの場合には単に地政学リスクのみならずエルドアンという大統領が中央銀行に勝手な注文を出しては混乱に陥れるというおまけもついており、自国の政情もかなり不安定です。
国の事情に精通しているのであれば問題はありませんが、本邦の経済紙あたりだけ見ていると実情が全くわからずに下手を打って大損に巻き込まれることもあるため、相当慎重な売買が求められます。
これまで暴落時に買っておくとそれなりにワークすることが多かったトルコリラ円ですが、底なしの下落のような状況になってしまいますとそんな悠長なことは言っていられない状況です。
やるとすれば底値でより低レバレッジの取引という方法も考えらますが、冷静に見た場合1万通貨で一か月2500円の利益を稼ぐ方法はいくらでも見つかる状況で、果たしてここまでリスクを冒し、精神的にも四六時中プレッシャーをかけられる売買をするべきなのかどうかは相当よく考えるべき時期にさしかかってきているようです。
努力をしなくても確実にもらえるスワップポイントほど魅力的なものはありませんが、現状ではこれを確保するのは至難の業に入りつつあり、本当にお得な売買法かどうかはよくわからなくなりつつあります。
(この記事を書いた人:今市太郎)