政治の憶測に基づく相場の見立てはかなり危険ですから日常的にはあまり行わないことにしているのですが、森友問題はいよいよ安倍総理の尻に火が付いた状態で関わった完了の辞任だけでは収まりがつかない状況になってきています。
今後の進展は状況を注視していくしかありませんが、為替の視点からこの事件を見ていきますとまたしても円高にふれる大きな材料になろうとしている状況で瞬間、一時的な下落の話としても決して見逃せないところにさしかかってきていることが危惧されます。
一介の小学校建設にここまで財務省が便宜を図る理由なし
森友学園の話はすでに1年以上その中身をめぐって国会での追及がなされた割には決定打がない状況でしたが、財務省の公文書偽造の問題、大阪の理財局で本件に関わったとされる役人の自殺、そして適材適所と言われた佐川国税庁長官の辞任ですでに事態は抜き差しならないところに向かいつつあります。
12日には財務省が正式に偽造を認める方向という報道も飛び出してきているだけに週明け事態が大きく動いた場合政権の維持が難しくなる可能性はかなり高まりそうです。
FXのコラムですから事態の細かいいきさつについてはぜひメディアの報道をご覧いただきたいと思いますが、過去5年間にわたり日銀の金融抑圧をアベノミクスと称して自画自賛してきた人物が失脚となれば、その内容の実態とは別に海外の投資家が嫌気することは間違いなく、株式市場と為替市場は応分の下落の直撃を受ける可能性はかなり高くなりそうです。
折しも相場はかなり不安定な状況を継続させていますから、この問題をきっかけにして外人勢が仕掛け売りをかましてくれば日経平均は結構大きく下落することが予想され、為替も本来ならばリスクを避けてドル高になるはずですが、こうした事態ではかならず円高に振れることが予想されます。
アベノミクススタート時の株と為替
思い起こせば2014年11月14日に当時の民主党の野田前総理が突然解散に打って出たことから、安倍総理が勝利し同年の年末からはじまったのがアベノミクスと呼ばれるわけのわからない政策でした。
3本の矢などと言いながら結局は国策で円安と株高を人工的に作り出す政策は外国人機筋がそれに乗る形となったことから、異常に上昇し同年の12月14日終値で80円24銭だったドル円、そして8664円だった日経平均は確かにこの5年で現象的にはかなり上昇したことは確かです。
しかし、米国と欧州の中銀が同時期にしかけた過度な金融緩和の影響で日本の市場にもその過剰流動性資金がおしかけてきたことのほうが実は大きく、日銀がETFで延々と企業の株式に下駄を履かせたことも相場を5000円程度引き上げることに貢献したといえます。
既に最高値の半値戻しは実現
株価は米国のNYダウに比べればかなり低いものの、様々な要因と人為的な下駄ばきでかなり高くなったように見えますが、為替はGPIFやPKO軍団が買い上げた割にはかなりもとに戻り始めており、2016年6月のBREXITの大騒動のときには既に半値戻しを実現しています。
そして今また100円台に逆戻りしかねない状況になりつつあるわけです。さすがに安倍政権瓦解でも政権スタート時の80円まで戻るとは考えにくいものの、他の要因を考えれば安倍辞任で100円程度まで下落するのはそれほど驚くべき状況ではないと考えられます。
ここのところ日銀黒田総裁が緩和の終焉を意識する発言をしはじめており、そのたびにドル円は円高にシフトしつつありますが、安倍首相がいなくなろうがどうしようが今の金融緩和を簡単にやめるわけにはいかず、国債の購入中止、ETFの買い付けを中止するといっただけで相応の相場下落を余儀なくされることは間違いないかなり厳しいところに来ているのは間違いありません。
この森友問題がどのように決着するのかはよくわかりませんが、金融相場にとってはなんら上伸の支援材料にはならず突然辞任が飛び出せばそれなりの下落に直面することだけは今から意識しておきたいところです。
なにしろ第一次内閣のときも健康問題とはいえ簡単に内閣を放り出した人物ですから崩れ始めると完全崩壊までの時間はそうかからないものと思われます。
(この記事を書いた人:今市太郎)